死ぬまでに絶対に読むべき!おすすめのミステリー・推理小説50選【面白い本を見つけて読書をさらに楽しく】

わかりやすくて面白い、それが「推理・ミステリー小説」

世の中には様々なジャンルの小説があります。
恋愛小説・純文学・私小説・伝記小説にファンタジーからSF、はたまたライトノベルまで、形式や文体、内容や出版の形態まで入れると、数限りなくあります。その中で、最も多くの人に読まれているジャンルが、「推理・ミステリー小説」というジャンルです。
もちろん、事件が起こって解決に導く内容なら何でも「推理・ミステリー小説」に含まれますから、範囲が広いというのもありますが、それを言ったら恋愛小説の範囲は莫大ですよね。
なのに、一番読まれているのはこのジャンル。
理由は簡単、このジャンルの小説は「わかりやすくて面白い」からです。

なんとなくぼわっと終わったりしない。

小説を読んでいて何となく「うーん」という気分になる時がありますよね。
これは本当にハッピーエンドと言っていいのだろうかと、小一時間頭を悩ませた経験は誰にでもあるのではないでしょうか。
もちろん、それは小説のみならず、物語エンターテインメントの醍醐味ではありますが、不得意な人も多いはずです。
そこ行くと、「推理・ミステリー小説」というのは、もう「スッキリ」「ハッキリ」「クッキリ」かたが付きます。
精神的な面や心理的な面で、もやーっとすることはあっても、少なくとも事件解決に関しては明瞭にかたがつくのです。
そこに超常の力やファンタジー要素は極力登場しません。
論理と科学でスッキリ解決をつけるのが、このジャンルのお約束だからです。
このスッキリ明瞭に解決するという特徴は、実は「ノックスの十戒」「ヴァン・ダインの二十則」「チャンドラーの九命題」といった過去の大物が作り上げたルールがあるくらいです。

読者を裏切らないジャンル

つまり、この「推理・ミステリー小説」のジャンルは、読者を裏切らないという明確な決まりがあるのです。決してインチキはせず、また、ありえない設定を用いたりはしない。(現在はよく使われていますが、双子のトリックというのも元々は邪道だったくらいです。)
そんな・・・ある意味で騎士道精神にすら通じるまっすぐな思想をもって、読者に挑戦してくる小説。あなたの目の前で繰り広げられる、目くるめく「推理・ミステリー小説」の世界。今回はそんな世界へご案内しましょう。

1|まずはこれを読まないと始まらない。「モルグ街の殺人」:エドガー・アラン・ポー(角川文庫)

アメリカ生まれの作家、エドガー・アラン・ポーによって記された、この「モルグ街の殺人」。実はこれこそが、世界最初の推理小説とされているものです。ですのでやはり最初におすすめしたいのはこの作品という事になるでしょう。この作品が世に出たのは1841年の事、なんと今から170年近く前の話になっています。読んでみて驚かされるのは、その内容と手口の斬新さが今なお使われている物であるという事。これから推理小説を読んでいくうえで、その原点がどうであったのか、ぜひ読んでみることをお勧めします。

2|そうなると次はこれでしょう。「江戸川乱歩傑作選」:江戸川乱歩(新潮文庫)

世界最初の推理小説が、エドガー・アラン・ポーのモルグ街の殺人ならば、日本発の推理小説は江戸川乱歩の「二銭銅貨」であるとされています。ちなみに江戸川乱歩というペンネームは、ご承知の通りエドガー・アラン・ポーのもじりです。その「二銭銅貨」が収録されているのが、この傑作選です。収録されているのは、「二銭銅貨」「D坂の殺人事件」「人間椅子」など、乱歩を代表する作品ばかり。その内容は、どれも、初期の推理小説において一つのスタイルとして常識だった、どこは怪しくそして淫靡なもの。背中を冷たい手でなぞられるような、ホラーのにも通じるような「ぞっ」とする展開は、間違いなく心を揺さぶります。

3|乱歩と言えばこちらも。「怪人二十面相」:江戸川乱歩(ポプラ文庫クラッシック)

おなじみ、少年探偵団シリーズです。昭和の推理小説ファンは、この江戸川乱歩の少年探偵団シリーズか名探偵ホームズのどちらかで、その推理小説の世界に引き込まれたと言って過言ではありません。登場人靴はおなじみ明智小五郎(某有名漫画にも、同じような名前の探偵が出てきますがこちらは本当の名探偵です)と小林少年率いる少年探偵団。そして宿敵が、本書のタイトルにもなっている「怪人二十面相」です。内容は、もともと少年向けの小説として書荒れた児童文学ですので、トリックの内容もストーリーも子供が読んでもわかりやすいものとなっています。しかしそこは江戸川乱歩ですから、大人が読んでも間違いなく面白い。推理小説の歴史を知る上でも、必読のシリーズです。

4|シリーズ作として大人気!「すべてがFになる」:森博嗣(講談社文庫)

大人気シリーズ「S&Mシリーズ」の第一作。推理小説ファンのみならず、このシリーズの熱狂的なファンであっても、この一作目こそ最高傑作だというほどの作品。それが、本書「すべてがFになる」です。登場人物は、大学教授の「犀川創平」と「西之園萌絵」(つまりこの二人がSM)。この作品単体で見れば、綿密なトリックと、大どんでん返しのラストというしっかりとしたつくりの読み応えのある推理小説ですが、シリーズで見ると、やはり魅力はこの二人。読み進めていくたびに、この二人に対する何とも言えない愛着がわいてきて、夢中になること間違いなしです。ぜひとも、この一冊で止まらず、シリーズを読んでいただきたいなと思いますね。

5|救いのない展開に震える。「慟哭」:貫井徳郎(創元推理文庫)

連続する幼女誘拐事件を軸に、捜査一課長の佐伯が泥沼のような事件の内容に巻き込まれていくお話。そこに、宗教という一つのファクトが加わることによって、話は残酷にも悲しい物へと一気に突き進んでいきます。ちなみにトリック自体は、残念ながら平凡。推理小説をよく読んで、こういった形式になれている方であれば、推理のトリック自体はそうそう難しいものではなく、結構あっさりとネタが割れてしまう程度のものです。しかし、物語の重厚さと、その卓越した心理描写が、トリックとは関係のない面白さを持っている小説です。ただの謎解きだけでは物足りない人、もしくは推理小説ではない小説になじみのある人でもしっかりと楽しめる。結末は、好き嫌いが分れると思いますが、価値のある一冊です。

6|なんでもこなせる万能作家の捕り物帳。「ぼんくら」:宮部みゆき(講談社文庫)

平成にあって推理小説を紹介するにあたって避けて通れない人物、それが宮部みゆきです。本格犯罪もの推理小説はもちろん、ファンタジーから超能力物、怪談話から犬視点の物などなんでも書ける才能には本当に驚かされます。そんな広大な宮部ワールドの中でも、一定のファンを抱えているのが、時代小説ジャンル。そのなかでも、特にご紹介したいのが、この「ぼんくら」です。もちろん、推理小説の体裁をとっている作品ですよ。(時代小説の場合特に捕り物系という言い方をしたりしますが。)時代小説に限らず、宮部作品の特徴は、人情というものをその中心に据えているところ。この作品でも、目くるめく事件の中に息づく人情の暖かさに、涙すること間違いなしです。

7|館殺人の出発点。「十角館の殺人」:綾辻行人(講談社文庫)

推理小説界において、90年代に現れた「新本格ミステリ」という運動の中心人物であった綾辻行人の処女作が本書。こののち、現段階で9作にわたって続く「館シリーズ」の記念すべき第一作です。ミステリ史上最大の結末という触れ込み通り、その驚愕のラストももちろんのこと、そこに至る道のりもまた、読ませるミステリにふさわしい内容です。彼の作品に共通する、真相を知る驚きという名の快感は、最初に読んだ一回きりしか味わえないものですので、未読の方が羨ましい。純粋に推理小説という点では、そのトリック他が若干薄く感じるものではありますが、作者の筆力がそう感じさせないあたり、上質な小説としても価値があります。衝撃のラストはたった1行。楽しみにしていてください。

8|現代推理小説の一つの頂点。「魍魎の匣」:京極夏彦(講談社ノベルズ)

「姑獲鳥の夏」で幕開けた、百鬼夜行シリーズの第2弾にして最高傑作の呼び声高いのが本書。第49回日本推理作家協会賞を受賞し、名実ともに、日本を代表する推理小説家「京極夏彦」の名を世に知らしめた傑作です。その影響は大きく、映画・漫画・アニメと日本における主要なメディア全てで公開された大人気作でもあります。舞台は、戦後間もない昭和27年の東京。そこで起こった、中央線の人身事故という平凡な事件を皮切りに、おなじみ作家関口巽が美しくも恐ろしい事件に巻き込まれていくというストーリーになっています。その内容は、まさに京極堂というべき完成度の高さ。もちろんシリーズ1作目「姑獲鳥の夏」を読んでおくことは、絶対なんですけどね。

9|賛否別れる問題作。「葉桜の季節に君を想うということ」:歌野晶午(文春文庫)

第57回推理作家協会賞・第4回本格ミステリ大賞をW受賞した本作。そういう意味では、もう間違いなく名作と良いっていいようなものですが、この作品に限ってはなかなかそうはいきません。物語は「なんでもやってやろう屋」を自称する私立探偵成瀬が、とある霊感商法の調査を依頼雨されたところから始まる、探偵モノ。恋愛要素もふんだんにあって、推理小説初心者でも楽しめる内容になっています。では何が、賛否別れる要因となっているのか、それはきっとリアリティー。人によっては「あまりにご都合主義すぎてついていけない」とまで言われる展開にあるのでしょう。しかしそれは、物語として、魅力ある展開であることの証でもあります。ラストの形にも賛否が分かれる本作、良作か駄作か、皆さんで確かめてみるといいのではないでしょうか。

10|その存在がミステリー。「イニシエーションラブ」乾くるみ(文春文庫)

ただただ推理小説だけが好きな人にはその9割9分が苦行。しかし、最後の最後のたったの2行で、全てが一変するという、この本自体がミステリーな作品が本書。と、言うのも、この小説、そのほとんどがバブル期の日本を舞台とした恋愛小説だからです。推理・ミステリー小説の傑作だと聞いてこの本を読んでみたのに……。なんて推理小説ファンには、本当に苦行というしかありません。しかし、その恋愛小説だというこの本の存在自体が、実はミステリー。その真相を知れば……推理小説ファンも納得です。胸を張って、「推理・ミステリー小説だった」と言える作品です。それも、たった2行でつづられる真相あるがゆえに。多くは語りません。ぜひ、最後の2行まで、しっかりと読んでみてください。

11|THE・ハードボイルド「新宿鮫」:大沢在昌(光文社文庫)

新宿歌舞伎町で夜な夜な活躍する、エリートコースを外れたキャリア刑事鮫島、通称「新宿鮫」。と、主人公の紹介をするだけで、もうむせかえるようなハードボイルド臭が立ち込めてくるのが、本作です。舞台は90年代の新宿なのですが、もうその文章の持つ雰囲気と、意図的なのか出てくる登場人物のキャラクターが70年代の日本の様で、面白いですね。探偵物語や西部警察や太陽にほえろみたいな、黄金期のハードボイルドに憧れた小説といった感じです。とにかく「男臭いカッコよさを煎じて煮詰めたらこうなる」といった描写にあふれていて、こういう格好の良さが好きな人には、お薦め以外の何物でもありません。なんせタイトル「新宿鮫」ですから。タイトルに惹かれた人がそのままどんぴしゃりの読者層で間違いないですね(サメ映画ファンはのぞく)。

12:ある意味トラベルミステリー!「インフェルノ」:ダン・ブラウン(角川文庫)、

トム・ハンクス主演で映画化もされた、世界的な話題作が本書。イタリアはフィレンツェを舞台に、記憶を失った教授がダンテの新曲にかくされた大いなる謎を解く。と、舞台設定もその主要テーマも、あまりに大風呂敷過ぎてめまいがしてきそうな作品ですが、広げた大風呂敷をきちんとしまうことのできている、良作です。また、こういう記憶喪失物には欠かせないお約束的展開が、しっかりとお約束として担保されているあたりも、よく出来ているな、と感心させられます。作中で、様々な出来事に対して膨大な知識を得ることが出来ますので、単に知識欲旺盛な方にもおすすめ。舞台であるフィレンツェの街並みや雰囲気の描写もよく、旅した気分にもなれるお得な作品です。

13|後味の悪さで特筆すべき問題作。「ひまわりの咲かない夏」:道尾秀介(新潮文庫)

良作と言われる小説には二つの種類があって、それは、皆から評価される分かりやすい作品と、一部の人にはもう我慢ならないほど嫌われる作品に別れます。そして、この作品は、そのうち後者に属します。理由は、怒りが沸き起こってきそうなほどの後味の悪さ。とにかくびっくりするくらい後味の悪い展開と、後味の悪い結末です。しかし、それはこの作品が、それほど人間の心に衝撃を与えることが出来る、力強い作品であることの証。と、ある理由で「本格推理小説」とは言えませんが、その破壊力というべき内容を、堪能してみるのもいいと思います。

14|隅から隅まで推理小説。「双頭の悪魔」:有栖川有栖(創元推理文庫)

ちょっと変わり種の小説を紹介してきましたので、ここでもう本当にしっかりと隅から隅まで純血の推理小説をご紹介します。それが、日本推理小説界の大家と言っていい有栖川有栖の「双頭の悪魔」。その内容は、もはや古典作品と言ってもいいほどに、推理小説かくあるべしを体現した、推理小説マニアを指の先までしびれるほどに満足させる純血種。もちろん推理小説初心者にも、しっかりとその魅力を感じさせる傑作です。上質な推理小説にとって不可欠な心理描写や登場人物の怪しくも魅力ある雰囲気も抜群で、推理小説とはどんなものですか?の問いの答えにしたくなります。

15|謎解きこそがその命!「占星術殺人事件」:島田荘司:(講談社文庫)

推理小説やミステリ小説と呼ばれるものの中には、なぞ解きや推理という側面よりも、人物描写や心理面を重視するものが多くあります。そして、最近はその傾向が強くなってきているようにも感じます。しかし、やはり推理小説と名乗る以上、その面白さの中心は推理やなぞ解きにあってほしいですよね。そんな、推理好きの人間の想いをしっかりと受けとめ、そしてそのうえで完膚なきまでに叩きのめしてしまうのが、本作です。推理マニアにおいては知らない人間のいない「名探偵・御手洗潔」が生まれた作品でもあり、ミステリーブームの先駆けとなった本作は、まさに推理の傑作。そのトリックの巧妙さと、なぞ解きの面白さは、格別です。余談ですが「殺人事件」ってタイトルの推理小説って、それっぽくて好きです。

16|騙されるという快楽。「ハサミ男」殊能将之(講談社文庫)

どんでん返しや驚くべき結末、という触れ込みの小説で一番有名な小説が本作。と、言う性質上、あまり詳しい説明はできないのですが「この本は読者を騙しにかかっているぞ」とわかったうえで読んでいても、結局騙される。そして、驚愕の事実を知って騙された自分が全然嫌ではない。むしろ快感ですらある。そんな、どんでん返しを身上とするタイプの小説のお手本というべき傑作となっています。いわゆるこういう小説を叙述トリックというのですが、もう本当に騙されているのがどこからなのかどれなのかが全く分かりません。糸口すらつかめません。というような話を続けていると、うっかりと何か書いてしまいそうなのでこの辺で。

17|内容と本の薄さは比例しない。「ロートレック荘事件」:筒井康隆(新潮文庫)

たった200ページしかない、短い短い推理小説に込められた、トリックの壮大さ。さすがはSF小説界の大御所である、筒井康隆の描いた小説だと思える、もはや奇想天外という言葉が似合う作品が本書。で、この作品の説明なのですが、それは……。不可能です、どうやったってこの小説のレビューや解説なんて出来っこありません。もちろん壮大にネタバレしていいというのであれば原稿用紙何十枚でも書けますが、ネタバレ禁止であることが前提なら、ハイ、書けません。ただ一言で言うならば、これは「推理小説を書こうと思ってたんだけどSF小説家の本性が出ちゃった」作品です。読んでくださいとしか、言えないなぁ。

18|日本文学史上最高のベストセラー作家の傑作。「ひまつぶしの殺人」:赤川次郎(光文社文庫)

著作の累計発行部数、2015年時点でなんと3億3000万部。まさに日本小説界の巨星にして、他の追随を許さない大ベストセラー作家、赤川次郎。その赤川次郎は、もちろん推理小説家で「三姉妹探偵シリーズ」「三毛猫ホームズシリーズ」などのシリーズものから「セーラー服と機関銃」の様なものまで、代表作はこれと言えないもの凄さ。そんな赤川次郎作品の中で今回おすすめしたいのが本書「暇つぶしの殺人」です。本書は、赤川作品の真骨頂である設定の妙とそのユーモアにあふれる書き味が存分に味わえる作品です。変な話「そりゃ売れるよな」と全力で納得できる魅力にあふれています。推理のみならず小説初心者にもお勧めの一冊です。

19|名作中の名作。「そして誰もいなくなった」:アガサ・クリスティー(ハヤカワ・ミステリー)

まず最初に気をつけていただきたいのは、お薦めなのは「清水俊二訳」の本作です。一般に旧訳版と言われているものですが、お買い求めの際にはぜひ気をつけてください。ハッキリ言って新訳版とは格が違います。と、前おいて、本作の紹介なのですが、紹介いらずの名作というのが一番の紹介でしょう。いま現在世界に存在する推理小説家の中で、この作品もしくはアガサ・クリスティーの影響を少しも受けていない人はいません。断言できます!なぜなら「アガサ・クリスティーの影響を受けていない人間を推理小説家と認めない」からです。推理・ミステリー小説がこの世に生まれて170年たった今でも、これこそが最高傑作だとして譲らない人がいるほどの大傑作。読まない理由は、ありません。

20|ユーモアたっぷりの会話劇。「謎解きはディナーの後で」:東川篤哉(小学館文庫)

推理小説のすそ野の広さを感じさせる、異色作。お話し的には、残念ながら推理小説ファンやミステリーマニアを納得させるような「謎解き」は出てきません。そういう意味では、あまりお勧めではないのです。しかし、会話劇としてみるなら、もしくはライトノベル的なライトな読み口に期待して読むならよく出来た作品だと言えるでしょう。つまり、これが推理小説のいいところです。数多くの推理小説の中には、このような「読書ライト層」にも受け入れられる本があるということ。ライトノベルが好きな方には、お薦めです。

21|日本で一番有名な推理小説。「金田一耕助ファイル1 八つ墓村」:横溝正史(角川文庫)

推理小説やミステリー小説に全く興味がなくても、だれもが聞いたことのある探偵金田一耕助のシリーズ1作目。そして、金田一耕助シリーズに全く興味がなくても、湖から突き出した脚や白い顔のスケキヨ(これは誤解なんですけどね)頭にろうそくを刺した殺人鬼など、やたらと誤解されたり、どこかで見たことがある作品。抜群の知名度を誇るのが、この「八つ墓村」です。(ちなみにスケキヨと逆さの脚は「犬神家の一族」です。)こう言ってしまっては元も子もないですが、知名度があるということは、面白いということ。実在の事件をもとにして描かれた横溝正史の怪しい世界をぜひ堪能してみてください。

22|物語りとしての完成度。「アヒルと鴨のコインロッカー」:伊坂幸太郎(創元推理文庫)

推理小説やミステリー小説における文学賞と言えば推理作家協会賞だとかミステリ大賞だとか様々ありますが、この本で伊坂幸太郎が受賞したのは吉川英治文学新人賞。推理小説やミステリー小説の賞ではないですから、いかにこの本が物語りとして質が高いかを物語っています。タイトルを見れば、この作者がどれほど言葉のバランス感覚に優れているかは説明不要ですが、ページの中の文章も雰囲気の良い読み口で好感が持てます。いわゆるリーダビリティー(読みやすさ)に優れているので、本当にすらすらと読める作品です。

23|ラストまで決してギブアップしてはいけない。「生ける屍の死」:山口雅也(創元推理文庫)

推理小説やミステリー小説にはよくあるのですが、最後のどんでん返し的ラストを際立たせるためにそこまでをできるだけ単調に描こうとする作品があります。そして、この作品が、まさにそう言った感じの出来になっています。文章自体の語り口は重厚で、本格推理小説らしさを醸し出していますが、とにかく単調です。しかも作者の死生観やらが長々と語られたりもして、本当に読みのに忍耐が必要です。しかし、それだけにたどり着いた先にある驚きが鮮烈で刺激的に感じられます。理由は言えませんが、少し推理小説のセオリーを無視している感はありますが、お薦めの一冊です。

24|嫌いな食品が増えます。「禁断のパンダ」:拓未司(宝島社)

例によって詳しくは書けませんが、フランス料理のとある品が食べられなくなるかもしれません。お気を付けください。この作者、辻調理師専門学校を卒業ののち、様々な料理店(主にフレンチ)を渡り歩いたのち作家になったという異色の経歴の持ち主。ですので料理の描写は本当にすごい、それが本当にすごいだけに、話の核心に関しては本当に気持ちが悪い。一言で言うなら「文章で吐ける」レベルです。しかしながら、テーマとしてはとても興味深いテーマを扱った作品ですので、怖いもの見たさで、読んでみるといいかもしれないですね。

25|長い長いお話なのに終わってほしくないほどの魅力。「ソロモンの偽証(全3部・6巻)」:宮部みゆき(新潮社)

もし、いま生きている作家の中で、最高の推理小説家を選べと言われれば、個人的には宮部みゆきさんと答えます。「06」で紹介した「ぼんくら」に続き二作目のご紹介ですが、それこそ宮部みゆきベスト10を、この50選にそのまま入れてしまいたいくらいの気分です。彼女の推理物の小説に特徴的なのは、その膨大な話の長さ。最近の作品のほとんどは少なくて上下巻というのが主で、この作品に至っては3部6巻というボリューム。それでも全く退屈させない、最初から最後までぐいぐいと話に引き込んでいく能力はさすがというほかありません。彼女の作品の良いところは、推理小説家にありがちな、どことなくひねくれた価値観と歓声が感じられないこと。親近感を感じる、ミステリー。ぜひ体感してください。

27|主人公がかっこいい。それだけ、だがそれがいい。「心霊探偵八雲1 赤い瞳は知っている」:神永学(角川文庫)

タイトル通り、主人公の探偵八雲は心霊術を使います。もうその段階で、推理小説としてどうなんだろう?と疑問を感じる人は多いと思います。事件のトリックにしろその解決にしろ、霊の力を借り始めたらそれはもう推理として成立しないのでは……?とお感じになられるはずです。が、この作品に限ってはそんなことどうでもいいのです。とにかく主人公がカッコいい。その格好の良さだけで、じゅうぶん一冊読んでしまえますし、間違いなくシリーズ読破したくなります。それだけですが、作品の魅力としてこれほど強いものもありません。

28|読んでも全く分からない、史上に燦然と輝く異色作。「ドグラ・マグラ」:夢野久作(角川文庫)

推理小説・・・中でも探偵モノと言われる小説の中で、歴史上ここまでの問題作はきっとなかったであろう作品が、本作。多くの推理小説ファンのみならず、小説ファン、文学者、はたまた普段は小説なんか読まない理系の人にまで熱狂的なファンがいる異色作です。はっきり言って、意味の分からないあやふやでぼやーっとしていておどろおどろしい作品です。食べ物で言うなら「くさや」とか「鮒ずし」のような異臭を放つ珍味系。とにかく一般受けなんかするはずもありません。それでも、名作、間違いなく文学史上に残る大傑作。表紙絵の恥ずかしさに打ち勝ってレジに持っていくだけの価値が間違いなくある作品です。(現在精神状態に難のある方には、結構真面目にお勧めできません。ご注意ください。)

29|人気作家の真骨頂!「流星の絆」:東野圭吾(講談社文庫)

上手な小説家がその才能をいかんなく発揮して文章を書くと、読者から「深みがない」と言われることがあります。小説家の技術の一つとして、読み手に親切な読みやすい文章を書くというものがる以上、それがいかんなく発揮されてしまうとすらすらと読めてしまうからです。それがヘビーな小説中毒者には、物足りなく感じてしまうわけです。そういう点でこの作品は物足りないという評価の多い作品ではあります。しかしながら、万人受けする人気作家である東野圭吾の作文力の真骨頂は、この深みがないと言われるこの作品にこそあると思っています。すらすら読めます!ぜひ読んでみてください。

30|記事を書く前に何を紹介するかは最初から決まっていた。「シャーロック・ホームズの事件簿」:コナン・ドイル(新潮文庫)

世界でもっとも有名で、もっとも愛され、もっとも信奉されている名探偵「シャーロック・ホームズ」シリーズです。ある意味、世界で一番有名な名探偵というよりも、彼こそが、もしくは彼だけが名探偵という冠詞をつけてもいい人物と言っていいかもしれません。そう言われたら、どの名探偵も認めざるを得ないでしょうから。細かい説明は不要です、今の推理小説の原点を作り上げた作品であり、いまだにスタンダードであり、頂点であるシリーズ。人類必読の書。と言っても過言ではありません。

31|6通りの解釈「毒入りチョコレート事件」)アントニイ・バークリー(創元推理文庫)

1929年に発表されたアントニー・バークリーの推理小説です。女性が毒入りのチョコレートを食べて死んだ事件について、犯罪研究会のメンバーがそれぞれ調査を開始。頭脳明晰なメンバーが一人ずつ推理を披露していきます。推理小説といえば、名探偵が真実をあばくのがお決まりのパターンですよね。しかし本書は、ひとつの事件を6人がぞれぞれ異なる解釈をしていきます。現代では聞きなれない言い回しもある日本語訳は、好みが分かれるかもしれませんが、単純な事件でも様々な解釈が可能であることを、推理小説で提示した貴重な1冊です。ひとつの事件はひとつの解決がお決まりだった時代に、ひとつの事件に複数の解決を並列する多重解決形式を創り出した著者の先見の明に脱帽です。

32|必死なのにコミカルになってしまう主人公「七回死んだ男」:西澤保彦(講談社文庫)

他のとの大きな違う点は、多くのミステリー小説は、犯人を探しだすことが目的ですよね。しかし本作は、殺人を阻止することが目的のミステリー小説です。端的にいうと、本書はタイムトラベルとミステリーを合体させた作品。タイトルの「七回死んだ男」とは主人公の祖父。主人公久太郎(名前はヒサタロウ。だが、キュータローと呼ばれる)は、タイムトラベル(過去の時間に戻り、未来を変えることができる)する力を持ちます。ただし、自分の意志とは関係なく強制的にタイムトラベルに巻き込まれ、回数はきっかり九回と決まっています。「時をかける少女」など一般的なタイムトラベルは、あるルールの元、主人公が自分の意志で自在に過去に戻ることができますが、本書の主人公久太郎は自分では制御できません。タイムトラベルできる能力があるのに、自分でコントールできない!そんな状況で久太郎は、なんとか祖父が殺されるのを防ぐために七転八倒します。いつタイムトラベルするかがわからないまま、殺人を阻止しようとする様子が、コミカルかつポップなノリで物語はすすんでいきます。人が死ぬ話なのに、こんなにテンポが良くていいのかと思いつつ、いつの間にかゲーム感覚で謎解きに夢中になっているはず!ミステリー初心者にとっては楽しめる1冊になっています。

33|現実がわからなくなる「ある閉ざされた雪の山荘で」:東野圭吾(講談社文庫)

ミステリーの世界では、「嵐の孤島、吹雪の山荘、陸の孤島」など外界との往来が断たれた状況で事件が起きることをクローズドサークル(closed circle)といいます。本作品は、「仮想の雪の山荘でのクローズドサークル」という異色の設定がされた長編推理小説です。ペンションに集められた劇団員7人が「豪雪に襲われ孤立した山荘の殺人劇」の舞台稽古を開始するところから物語はスタートします。しかし単なる稽古のはずなのに、7人の劇団員が一人ずつ消えていきます。著者の巧みな描写により、読者は目の前で起きていることが芝居なのか現実なのか・・・区別がつかなくなっていきます。犯人が誰なのか、そもそもこの話は芝居なのか現実なのか。登場人物たちの心理描写、最後の最後まで真相が読めない計算し尽くされた構造は、職人技のなせる超絶技巧と言えます。さて、真相はどうだったのか、は本書で確かめてくださいね。

34|どうか捕まらないでと願ってしまう「青の炎」:貴志祐介(角川文庫)

2003年に二宮和也(嵐)主演で映画化もされた本作品。。主人公は、完全犯罪に挑む17歳の少年。一見完璧に見えた完全犯罪も綻びが露見し、次第に追い詰められいくその過程が丁寧に描写されています。読者は、主人公が完全犯罪を計画する背景、まっすぐな思いに引き込まれ、いつのまにか謎解きよりもどうか主人公が捕まらないようにと願い始めているはずです。ミステリー小説で、ここまで犯人が捕まらないようにと読者が願わずにはいられない作品は本作をのぞいて存在しない気がします。17歳の少年の心の軌跡を描いた青春小説のようなミステリー小説です。

35|小学生にもおすすめ「マリオネットの罠」:赤川次郎(文春文庫)

本書は、「三毛猫ホームズ」「セーラー服と機関銃」などユーモアミステリー、サスペンス小説、恋愛小説まで幅広く活躍する赤川 次郎氏の処女作品。処女作であり、最高傑作とも言われる作品です。怪しい洋館、幽閉された美少女、地下室、巨大な精神病棟などどこか映画のような設定は好みが分かれるかもしれません。テンポの良い話の展開、どんでん返しなど、小学校高学年でも楽しく読み進められる内容になっています。人の殺意はどこから発生するのか、読み終わった後タイトルのマリオネットの意味が明らかになると思います。

36|天才乙一の世界「夏と花火と私の死体」:乙一 (集英社文庫)

ミステリー、ファンタジー、ホラーなどジャンルの壁を超え次々と世に送り出し天才と称される乙一。ファンの間では切なく心温まる作品は白乙一、残酷な描写を含むブラックな作品は黒乙一とも言われています。本作品は、彼が16歳(執筆当時)で描いた小説です。思いがけず殺人を犯してしまった少女とその兄が死体を隠そうとする話ですが、作品の語り手はなんと死体・・!死体が繰り出す淡々とした語り、無邪気さからくる残酷な結末、高い完成度。これをわずか16歳で描いた乙一の才能にも驚愕です。ちなみに本書は夜中には読まない、先にトイレに行っておくことをおすすめします。

37|すぐそこにある暗闇「火車」:宮部みゆき(新潮文庫)

失踪した女性を探す長編ミステリー。多重債務をめぐる取り立てに翻弄される女性、彼女を追い求める刑事の視点から描いた作品です。何者かになろうとして幸せをめざしたはずが、ちょっとしたボタンのかけ違いで社会の闇にはまってしまう。その過程は、発行から20年たった現在でも、ひょっとしたら自分自身にも起きるのではないかというリアルな恐怖感があります。計算された伏線が、見事に回収されていくストーリー展開も傑作です。ちなみに、火車/化車(かしゃ)とは、悪行を積み重ねた末に死んだ者の亡骸を奪うとされる日本の妖怪の名称でもあります。単純にスパッと爽快に進まないストーリーが、どういう結末にたどり着くのかは本書で確かめてください。

38|本格ミステリーをお楽しみください「開かせていただき光栄です」:皆川博子(ハヤカワ文庫)

舞台は、18世紀ロンドン。解剖教室からあるはずのない死体、四肢を切断された少年と顔をつぶされた男が発見されたところから物語はスタートします。産業革命により世界の工場として地位を気づいた英国。しかし現実は、貧困、失業、犯罪と庶民にとっては無政府状態。そんなイギリスの光と影を背景に事件は展開していきます。グロテスクな表現や同性愛を匂わせる描写は好みが分かれるかもしれません。事件解明を目指す、盲目治安判事が登場すると物語は一層深みを増します。ひとつの謎がとけるとまたひとつ謎が生まれれる重層的な物語構成は、本格ミステリーとして存分に楽しめます。派手なトリックはない作品ですが、練り上げられた物語構成は読み込むほどに味わい深くなるはずです。

39|真実は、幸福とは限らない「真夏の方程式」:東野圭吾(文春文庫)

累計1320万部突破、2013年福山雅治主演ガリレオシリーズとして映画化もされた本作品。海で発見された男の変死体から物語ははじまります。主人公湯川と少年との交流を軸に物語は展開していきます。事故か殺人か謎解きの要素もしっかりありながら、舞台となる海沿いのの街の様子、心理描写も丁寧に描かれ軸となる少年がひと夏で成長していく過程も楽しめます。真相を暴くことが必ずしも人を幸せにするとは限らない、真相が紐解かれるたびに切ない気持ちになるかもしれません。真夏の夜に手に取りたい1冊です。

40|圧倒的な絶望「告白」:湊かなえ(双葉社)

主人公は、我が子を校内で亡くした女性教師。ひとつの事件をモノローグ形式で級友、犯人、犯人の家族それぞれの視点から語らせ真相に迫る物語です。湊かなえ氏のデビュー作である本作品は、緻密な構成、完成度の高さ、衝撃的な結末は新人とは思えない圧倒的な力量を感じさせます。娘を殺された教師、クラスの委員長、引きこもり当人と母、自称天才、と閉ざされた人間関係の中で繰り広げられる「告白」により幼い娘の事故死の真相があぶり出されていきます。誰もが持っているであろう人間の醜さを容赦なく描き切る本作品、事件の真相には胸を締め付けられます。2010年には映画化もされている本作品、主演松たか子の迫真の演技もぜひご覧ください。

41|バカバカしくてもいいじゃない「田舎の刑事の趣味とお仕事」:滝田務雄(創元推理文庫)

息もつけないミステリーを堪能したら、肩の力を抜いて楽しめる推理小説もいかがですか?
滝田務雄氏による田舎の刑事シリーズは、のどかな田舎を舞台に難事件を解決していくシリーズ物。起こる事件はワサビ泥棒、コンビニ立てこもり事件、カラス騒動にトーテムポール損壊事件などなど。刑事の脇を固める黒川の奥さんなどのキャラクター陣も個性的で、テンポよく話は展開します。バカバカしいノリの割に、伏線をめぐらせ堅実な推理を進めていきます。2012年には「デカ 黒川鈴木」のタイトルで板尾創路主演でテレビドラマ化もされた本作品。ちなみに「黒川鈴木」とは、黒川と鈴木ではなく刑事の氏名(黒川鈴木でフルネーム)です。本格ミステリやリアルを追求する人にとっては、馴染みにくいかもしれませんが、たまには推理小説をユーモアたっぷりに楽しんでみてはいかがでしょうか。

42|青春なのかミステリーなのか「彼女は存在しない」:浦賀和宏(幻冬舎)

ラストのどんでん返しは、ミステリーの醍醐味のひとつです。そんなどんでん返しを楽しみたい方におすすめなのが、本作品。横浜を舞台にした多重人格サイコ・ミステリーで、主人公は、平凡だが幸せな生活を送る香奈子。そんな彼女の日常は、恋人貴治がある日突然何者かに殺されたのをきっかけに狂い始めていきます。もうひとり重要なキーパーソンは、異常行動をする妹をもつ根本。次々と発生する凄惨な事件が、香奈子と根本を結びつけていきます。登場人物の女性たちの関係性が、鮮やかにひっくり返されラストを迎えます。2003年出版当時、本好き書店員さんの間で話題になった本書。ミステリー小説でありながら、青春小説のようなストーリーは一読の価値があります。

43|現代に現れたミステリーの古典「皮膚の下の頭蓋骨」:P・D・ジェイムズ(ハヤカワ・ミステリ文庫)

アガサクリスティーを彷彿とさせる探偵小説の流れを継いだ作家P・D・ジェイムズ。本作品は、離れ小島で発生した密室殺人事件。犯人は島に寝泊まりする中にいるとされ、主人公である私立探偵コーデリア・グレイが操作を開始します。主人公コーデリアの可憐で健気な人柄に惹かれる読者も多くいる本作品。ミステリーの謎解き要素よりも、事件前後の関係者たちの心理描写、人間関係を緻密に描き込む作風は好みがわかれるかもしれません。後半、推理が進むにつれ皮膚の下の頭蓋骨の意味も判明します。話の展開はかなりゆっくりしてるのでで腰をすえてミステリー古典の世界を楽しみたい方におすすめです。

44|死んだのは一体誰なのか「ナイン・テイラーズ」:ドロシー・L・セイヤーズ(創元推理文庫)

1934年発行の江戸川乱歩も賞賛した探偵小説です。英国貴族ピーターが、探偵として活躍するミステリーで今回はイングランド東部にある小さな村が舞台になります。タイトルになっている「ナイン・テイラーズ」は、死者を送るために鳴らす教会の鐘のことをさします。
※ちなみに死者が、女性の場合は6回鳴らす六告鐘(シックス・テイラーズ)。男性の場合は9回鳴ら九告鐘(ナイン・テイラーズ)と言う。偶然村に訪れたピーターは、鐘を鳴らす手伝いをきっかけにある不思議な事件に巻き込まれていきます。独特の文化を持つ小さな村で見つかる謎の死体、顔がつぶされ、手首から先が切り取られ、死因は不明。一体死体は誰なのか事件なのか殺人なのか・・。海外古典ミステリーとして有名な本作品、事件の真相は本書で確かめてくださいね。

45|これはラブストーリーなのかミステリーなのか「半身」:サラ・ウォーターズ(創元推理文庫)

舞台は1874年英国、主人公は刑務所を慰問で訪れる貴婦人。刑務所で霊媒の女囚人と出会ったことをきっかけに、主人公が女囚人に依存し心が蝕ばまれていきます。牢獄の陰鬱さ、当時の特権階級の女性が抱る孤独感がリアルに描かれます。無駄なく計算し尽くされた伏線は見事で、結末がわかった後にも再読したくなります。読み方によって、ラブストーリー、社会派小説、サスペンスとも受け取れる本書。主人公が感じる「こうあらねばならない」という孤独や抑圧は、現代を生きる女性にも共通するものがあるかもしれません。レズビアニズムをモチーフにしていたり、孤独感や絶望を描く作品のため好みが分かれるかもしれません。さてこのお話が、のような最後を迎えるのかは、読んだ人だけのお楽しみです。

46|本気で犯人を当ててください「不連続殺人事件」:坂口安吾(新潮文庫)

1947年(昭和22年)に発表された坂口安吾の長編小説です。本作品は坂口 安吾から読者への挑戦状として、「真犯人を特定した優秀な回答には小説の原稿料(解決編の原稿料)を渡す」という懸賞金がかけられたことで、ファンの間や関係者で評判になった作品です。この犯人当てには、江戸川乱歩らも挑戦し、読者を巻きこみかなりな盛り上がりをしたということです。肝心な話の内容ですが、舞台は第二次世界大戦から2年が経過した1947年(昭和22年)夏。財閥歌川多門邸で次々と殺人事件発生し名探偵巨勢博士が真犯人解明に乗り出す物語です。登場人物は、奇人変人ともいえる癖のある人物ばかり。人物の設定や背景、巧妙な会話、そこに坂口 安吾独自の文体が加わることで、時代を感じさせない面白さで一気に読み進めます。探偵の推理は論理的で納得感があります。さて、読者を巻き込んだ「犯人当て」ですが、発表当時は4人の読者が「犯人当て」に成功し完璧な推理だったとのこと。あなたも「犯人当て」に挑戦してみてくださいね。

47|罠にはまった女「ウツボカズラの甘い息」:柚月裕子(幻冬舎文庫)

日常生活に潜む脆さを描いたミステリーを描いた作品です。主人公は家事と育児に追われる普通の主婦高村文絵。しかしある日、殺人の容疑者として突然逮捕される・・・。さらには、巨額詐欺の疑いも浮上し、彼女が犯人なのか、真犯人は他にいるのか・・。本書は高村文絵と彼女を逮捕する警察それぞれの視点から物語が進み、最後に真相が解明されます。容姿の衰え、肉体の衰え、子供への愛情、同窓生への見栄、拠り所としての新興宗教、マルチ商法など女の心のスキをついた甘い罠に足をとられ深くはまっていく姿は、リアルな怖さがあります。前半は、主人公文絵と刑事の捜査の2つパートで構成され交互に物語が展開するため読みなれるのに時間がかかるかもしれません。2つの軸は交わるのは終盤、真相は本書で確かめてください。

48|ミステリーに読み疲れたら「式の前日」:穂積(小学館)

デビュー作ながら大きな話題を呼んだ本作品は、叙述トリック(一部の情報を意図的に伏せ、読者のミスリードを誘うトリックのこと)が効いたコミック短編集です。結婚をひかえた男と女、双子の兄弟、ワケあり親子、書けなくなった小説家と謎の少女、親を失った兄妹など「ふたりきり」という密接した人間関係を描いた短編6作。大仕掛けで派手などんでん返しではないものの、どの短編にも読者の勝手なな思い込みをひっくり返すオチがしっかり用意されています。繊細なタッチの作風も相まって、感情が静かにあふれてくるような優しい作品となっています。骨太なミステリーに読み疲れたときはこちらの作品を手に取ることをおすすめします。

49|生まれてしまった罪「氷点(上)(下)」:三浦綾子(角川文庫)

作者である三浦綾子氏は77歳でこの世を去るまで、結核、脊椎カリエス、心臓発作、直腸癌、パーキンソン病など多くの病に苦しみながら、クリスチャン(プロテスタント)信仰を土台にした著作を次々と発表しました。1965年に刊行され本作品は、物語の背景にキリスト教の概念である原罪が重要なテーマとして置かれ、作者のクリスチャンという立場が濃く映し出された物語です。北海道旭川を舞台に、医師である辻口啓造、妻夏枝、養子として迎えられた娘陽子を軸に物語は展開します。夫婦の実の娘ルリ子はわずか3歳で殺害され、養子として陽子を迎えます。しかし娘陽子の実の親が判明したことで、物語は複雑化していきます。昭和から平成にかけ名幾度もドラマ化され、韓国台湾でもドラマ化された本作品は、映像で目にした方も多いのではないでしょうか。原罪と赦しを描く原作にもぜひ触れてみてください。


50|一度は読んでおいて損はない「谷崎潤一郎犯罪小説集」:谷崎潤一郎(集英社文庫)

本作品は、近代日本文学を代表する小説家谷崎潤一郎が描いたミステリーサスペンス短編集です。読み慣れな言い回しに多少馴染むのに時間がかかるかもしれません。本作品には犯罪をテーマにした「途上」「柳湯の事件」「私」「白昼鬼語」の合計4編が収録されています。ミステリーの謎解きの醍醐味がしっかり楽しめるこれら作品は、芥川龍之介や江戸川乱歩や戦後のミステリー作家にも大きく影響を及ぼしたとも言われています。文豪谷崎潤一郎の作品は難しそう、耽美で的なんとなく苦手という方こそ楽しめるはずです。

 

「死ぬまでに絶対に読むべき!おすすめのミステリー・推理小説50選【面白い本を見つけて読書をさらに楽しく】」はいかがでしたか?楽しんでいただけたでしょうか?

推理小説は、様々なジャンルの中でも読みやすさでは頭一つ抜きんでたジャンルです。
読書という習慣に目覚めたい貴方にも自信を持って、おすすめすることができます。

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