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小説の面白さを例える例え方って色々ありますよね。たとえば「ワクワクして眠れなくなる」とか「人生で一番良かった」とか「本の世界に引き込まれる」とか、どれも面白そうだな、と思える言い方です。
でも、その中でも特に惹かれるのは「人にすすめたくなるほど面白い」という言い方ではないでしょうか?
もう、とにかく面白くて、この小説の良さをだれでもいいから教えたい!オススメしたい!というわけで、今回は「読んだら絶対に人にオススメしたくなる小説ランキングTOP10」と題して、そんな人にすすめたくなるような小説のランキング、言ってみたいと思います。
第10位|「火花」/又吉直樹
言わずと知れた芸人でありながら芥川賞をとってしまった異色の小説家「又吉直樹」さんの作品ですね。豊富な読書量と、小説というものの愛に支えられたしっかりとした文章力の上に、芸人という異色の世界を肌で感じて知っているリアリティーが合わさって、この世で又吉直樹にしか書けない世界観を実現させた傑作です。もちろんこの小説に関して言えば、あなたがオススメしなくとも、世間やマスコミで、もうさんざんオススメているとは思いますが読んでみればその理由はわかります。ひとたび最後まで読み進めれば、「どうせマスコミのごり押しで芸人の小説をプッシュしてるだけじゃん」などと言っている人に「騙された思って!」とお勧めしたくなること間違いなしです。
第9位|「ぼんくら」/宮部みゆき
どんなにオススメしたくても、オススメするのに躊躇してしまうたぐいの小説ってありますよね。もちろんエログロの話をしているのではなくて、そのジャンルが一般的に人気のないジャンルだったりすると、面白くてもなかなかオススメしにくいものです。そして、そんなジャンルの一つに「時代小説」があります。大抵ほとんどの時代小説は「江戸時代の江戸」について書かれたものが多く、わかりやすく言えばチャンバラドラマの世界です。これは、本当に好きなひとでないとなかなか手にとりにくいジャンル。しかし、そこは稀代のストーリーテラー宮部みゆき。そのとっつきにくいジャンルを、誰もが読みやすくそして感情移入しやすくまとめ上げたのが、この「ぼんくら」たとえ、時代小説のジャンルに全く興味がなかったり、どう考えても読みそうにない人であっても、自信を持ってオススメできる、そして、オススメしたくなる良作です。
第8位|「それから」/夏目漱石
驚くほどのビックネーム、文豪中の文豪が出てきてしまいましたが、問題なしです。文豪の描いた名作小説というのは、なかなかに内容が難解で、しかも一番の欠点として、時代背景が違う上に現代人が書いたわけではないのでそのあたり対する配慮もないという、感情移入のしにくさがあります。なかなかに現代人として「銀ブラを趣味にするモダンボーイが集まりそうなミルクスタンド」と言われてもポカーンとしてしまいますよね。しかし、夏目漱石の「それから」はこれはけっこうこの時代にもマッチして感情移入しやすいはずなんです。というのも、主人公、絵にかいたような圧倒的な「だめニート」なんですから。最近のライトノベル界隈で、よく主人公として抜擢される「だめニート」が主人公の夏目漱石の小説、というだけで興味がわいてきませんか?もちろん内容の面白さに関しては、それはもう夏目漱石なんですから言うまでもありません、普通に面白いです。誰かにお勧めするときに「文豪の書いただめニート小説読んでみない」なんてオススメすることができるのは、この「それから」だけです。
第7位|「江戸川乱歩全集」/江戸川乱歩
夏目漱石に引き続きの文豪ですが、江戸川乱歩は、時代の表街道に燦然と輝く大看板の夏目漱石と違って、裏路地でひっそりと輝くネオンサインの様な裏街道の文豪。そのエンターティンメント性は、時代を選ばない、人間の本質や隠れた本性を呼び覚ます感じのもので、今の人が読んでもしっかりと楽しめることは間違いありません。しかも乱歩の小説は、今流行りの推理やミステリーの元祖。今や小説に留まらず、ドラマに映画、漫画やアニメの分野においても、最も人気を博しているジャンルであるミステリーや推理物の元祖なんですから、オススメして失敗はなかなかしないでしょう。しかも最近アニメ化されて地上波で放映されていましたから、少なくともそのアニメを見ていた人にはこれほどオススメしやすいものはありません。また、乱歩の小説の特徴の一つに、どことなく影のある世界観というものがあります。この影のある世界観というやつが、ダークで若干中二病が入っているような人には狂おしいほどに引き込まれる世界観だったりもします。オススメできる異色作です。
第6位|「東海道中膝栗毛」/十返舎一九
古典です。江戸時代に書かれた小説ですから、これは間違いなく古典作品と言われるものです。もうとっつきにくさのジャンルで言えば、外国語で書かれた小説の次くらいにとっつきにくい小説であることは間違いありませんよね。もちろん、原文をそのまま読むのはとっつきにくいを通り越して解読不能ですから現代語訳されている物を読むべきなのですが、それでもイメージとしてなかなか手が出ませんよね。しかし、これは大丈夫。この「東海道中膝栗毛」は、それこそ子供が読んでも大丈夫なほどに内容は簡単で、しかも「滑稽本」と言われる、簡単に言えば「ギャグ小説」なので、普通に笑える面白さ。名前だけなら何となく聞いたことのある「弥次さん喜多さん」の二人が、旅行している道中で出会う、ばかばかしくも人間味あふれる面白エピソードの数々。いうなれば「江戸時代版すべらない話」とでも例えるのが一番しっくりくる、そんな小説です。江戸時代に書かれた古典文学をたしなむ第一歩としても、また普通に楽しい小説としても、読んで損のない小説ですので、自信をもってほかの人にもオススメできます。それに、オススメの小説は古典文学ですって、なんかかっこよくないですか?
第5位|「ナタラージュ」/島本理生
謎解き感覚で楽しめる小説というのは、非常に面白いもので、だからこそ推理小説やミステリー小説というものが流行っているわけなんですが。この小説は、はっきりと恋愛小説です。少女であったころ、熱烈なる思いを捧げた高校時代の恩師と、そして大学時代に知り合った男子大学生との間で繰り広げられる、もどかしくも切ない恋愛が繰り広げられる、極上の恋愛小説です。きゅんとしたり、胸が苦しくなったり、思わず涙したり。質のいい恋愛小説で味わえる全てを味わうことのできる小説であることは、もう折り紙付きで間違いのない事なのですが、この小説、謎な部分が多くて謎解きの楽しさも味わうことができる贅沢なつくりになっています。とにかく様々な部分で、読み進んでいかないと理解できないような描写や出来事が続きます。そして次第にいろいろな部分の謎が解け、いわゆる謎解きの楽しさを存分に味わうことができるつくりになっているのです。というわけでこの本は、恋愛小説が大好きな人にはもちろんのこと、なぞ解き系が好きな人にも安心してオススメできる作品になっています。どちらかのジャンルに苦手意識を持っている人にとっても、いい作品なのかもしれませんね。
第4位|「毒見師イレーナ」/マリア・Vスナイダー
次にご紹介するこの作品は、いわゆる『異世界ファンタジー小説』。作者はアメリカ人の女性作家ですので、いわゆる最近のライトノベルでよくある感じの異世界ファンタジーとは毛色の違う作品ではありますが、間違いなくそう呼んで差し支えないものになっています。ですから、いわゆる今流行りの異世界ファンタジーはちょっとなぁと思っている人に、異世界ファンタジーの世界的な意味での違う側面を紹介するには最適の作品かもしれません。内容は、かなり過酷ですけどね。何が過酷って、この主人公イレーナの置かれている現状や、その生活の全てが過酷。そもそも始まってすぐにイレーナは死刑囚なんですから。この小説の作者であるマリア・Vスナイダーは、過去にイレーナという名前の女の子にひどい目にあわせれて、個人的な恨みでも抱えてるんではないかと思ってしまうほどに理不尽なまでの過酷さ。しかしもちろん最終的にはしっかりと収まります、ちょっとしたラブロマンスももちろんあります。新しいジャンルに挑戦したい、異世界ファンタジーも読んでみたいという人には、ぜひオススメできる作品ですね。
第3位|「本好きの下克上」/香月美夜
いわゆる、ネット投稿小説派生の小説で一般に「なろう系」と言われるライトノベルの中でも、個人的に出色の出来だと太鼓判を押せるのが、この「本好きの下克上」です。一応正式なタイトルは「本好きの下克上~司書になるためには手段を選んでいられません~」というものになりますが、この長いサブタイトル通りの、非常に面白い内容です。簡単に言うとこの作品は、ライトノベル界隈によくある『異世界転生物』という事になります。本が好きで好きで仕方のなかった主人公が、本の山にうづもれて死んでしまい、そして魔法などのあるわかりやすいファンタジー世界に転生する。と、ここまではよく見るお話しなんですが、ここからが違います。主人公は魔王を倒すでも新しい世界をエンジョイするでもなく、本どころか紙一枚すら庶民には手に入らない世界で、図書館司書になるために悪戦苦闘するという御話です。このお話、とにかく世界観の作りこみが丁寧で、そしてリアリティーがある。いわゆる「なろう系」の小説では物足りないという人でも、きちんとした小説の体をしっかりと作り上げているこの小説なら胸を張ってオススメできます。
第2位|「陰陽師」/夢枕獏
今流行りのジャンルが異世界ファンタジーなら、これは平安時代を舞台にした日本の王朝風ファンタジー。主人公は、日本の歴史的な人物の中では織田信長に次いで、様々な小説やドラマ、映画、漫画やアニメ、ゲームに至るまで登場人物や主人公としてよく登場する「安倍晴明」。この物語は、呪詛や呪術が横行する平安京で、天才的な陰陽師としての力を持った、平たく言えば魔法つかいとでもいうべき安倍晴明が、あやかしや式神などを織り交ぜて活躍するというファンタジー小説です。と、言っても、数々の事件や難題のそのほとんどが人間の情慾や感情によって生まれる事件であるところが、この物語を単なるファンタジーではなく人間ドラマとしても一級品にしています。京の雅を感じさせる、淡々とした語り口。そして、もう一人の主人公と言って過言ではない源博将との友情。どの側面から読んでも、非常によくできていて、ここまでしっかりと穴のない小説なら間違いなく人にオススメできる作品です。また最近、スマホのソーシャルゲームでこの世界観をもとにした同名タイトルのゲームも人気なようで、そういった点でもお薦めしやすいですよね。
第1位|「火車」/宮部みゆき
最後にお勧めするのは、やはり現在の時点において日本で最高峰のストーリーテラーである宮部みゆきの出世作「火車」でしょう。はっきり言って、今の段階で人気の小説家という人はたくさんいらっしゃいますが、ファンタジー・時代小説・ホラー・そしてある意味本業であるミステリーや推理という様々なジャンルの小説を書きこなし、そしてどれも間違いなく面白いというのはこの人しかいません。そういった意味で、本当の意味でオススメなのは、この作品ではなく「宮部みゆき」という人間そのものだと言ってもいいくらいです。とにかくこの宮部みゆきという作家は、読む人間を小説の中の世界に引き込むのが異常にうまい。どんなに変わった世界観であろうと難解な事件であろうと、それこそ時代が全く違う話であろうと、気が付けばその世界で生活している人間であるかのような錯覚さえ覚えます。そんな宮部みゆきさんの出世作「火車」が面白くないわけはありません。第1位にふさわしい作品だと思いますし、また、小説家「宮部みゆき」こそがお勧めしたいもののナンバー1だという意味で、最後の締めには文句なしだと言えます。
いかがでしたか?「読んだら絶対に人にオススメしたくなる小説ランキングTOP10」。どれもこれも、珠玉の名作ばかりですので、順位に関係なく、きっと楽しんでいただけると思います。そして当然、人にオススメしたくなる。いい小説に出会う幸せというのは人生において貴重な財産です。そんな貴重な財産をどうぞ手に入れて、そしていろんな人に分け与えてくださいね。
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