中学生・高校生が読むべき!おすすめのスポーツ青春小説10選【本を読んで人生を豊に!】

1|一瞬の風になれ(著者:佐藤多佳子/講談社)

2007年本屋大賞を受賞した本作品。高校の陸上部が舞台に、陸上競技の花形ともいえる4人リレー(4人でバトンをつなぐ400Mリレー)を描きます。主人公「新二」は、サッカー選手として将来を期待される兄を持ちます。兄の背中を追いかけて幼い時からサッカーに打ち込むもの挫折。サッカーの道を諦め、高校では幼馴染の「連」と一緒に陸上部にはいります。幼馴染の「連」もまた、兄と同じように才能に溢れた天才肌。彼の背中を追いかけ、成長していく新二の姿を描いた小説です。誰だって、なれるものなら才能に溢れた天才側になりたいはず。でも天才になれないなら、努力するしかない。そんな新二のひたむきさは爽快感があります。ただでさえ、誰かと比較しがちな10代。そんな多感な時期に、天才に囲まれて心穏やかにすごせるはずがない!葛藤を超えていく新二の姿は、大人にも響くものがあります。過去に何かに打ち込んだ経験がある人にとっては、ぐっと心に迫るものがあるかもしれません。競技前の緊張感や記録を更新したときの快感は、懐かしい気持ちなるはずです。第一部、第二部、第三部とぜひ3冊通しで読んでほしい作品です。

2|風が強く吹いている(著者:三浦しをん/新潮社)

毎年、テレビ中継される箱根駅伝に胸を熱くする大人も多いはず。本作品は、そんな箱根駅伝を舞台にしています。2007年に漫画化&ラジオドラマ化し、2009年には舞台&映画化されています。小説よりも、映画やアニメで目にした方も多いのではないでしょうか。天才ランナー・蔵原走(カケル)と清瀬灰二(ハイジ)が出会うところから物語はスタートします。この2人を中心に、寄せ集めの10人で箱根駅伝を目指します。と無理な目標を目指す、小さな恋、友達との葛藤など「ザ・青春小説の王道」とも言える内容になっています。とりあえず集まった素人で箱根の山をめざすなんて無謀すぎますが、読み進めるうちに不思議と「あれ?行けるのかもしれない」と確信が生まれていきます。その理由は、緻密で丁寧な取材。この取材のおかげで、かなりリアルで説得力のある内容になっています。500ページというかなりボリュームのある内容になっていますが、物語は最後までテンポよく進むため飽きさせません。読んだ後には、明日の朝、走ろうかなとそわそわしてくるはずです。

3|ボックス!(著者:百田尚樹/講談社文庫)

高校教師の耀子が、一人の少年に助けられたところから物語ははじまります。助けてくれた少年(鏑矢義平)は、実は耀子の学校の生徒でした。ボクシングで圧倒的な強さを持つ、天才型の「鏑矢」。彼に憧れる努力型の「木樽」、圧倒的な強さを見せつける「稲垣」の3人を軸に話は展開していきます。圧倒的な才能を持ちながら、練習をしない鏑矢。コツコツと努力し成長していく木樽。精密な機械のように自分をコントロールする稲垣。少年漫画の王道のような3人の登場人物たち。”一瞬の風になれ”のボクシング版のような作品ですが、こちらもスピード感のある文章で一気に読み進めます。同時に、登場人物の揺れうごく気持ちが繊細に描写され、おもいっきり感情が入っていきます。ボクシングの知識がなくても夢中になれること間違いなしです。

4|卒業ホームラン自選短編集・男子編(著者:重松清/新潮文庫)

タイトルである「卒業ホームラン」を含む、短編集をあつめた一冊です。重松清作品の入門編のような短編集です。タイトルの「卒業ホームラン」は、少年野球監督である父と選手の息子を中心に描かれた物語です。小学1年生から、少年野球チームに所属する息子智。彼は、こつこつと努力しているものの補欠のまま6年生を迎えます。監督でもあり父である徹夫は、息子を卒業試合に使うべきか葛藤します。監督としての判断と、父親としての判断。その間で揺れ動く父の葛藤を通して、努力とは何か、頑張ることについて今一度考えることができる作品です。天才的なヒーローはでてきませんが、背中をそっと押してくれます。不器用でカッコ悪いけど、本当に一生懸命だったそんな時期を思い出させてくれる1冊です。

5|チア男子!!(著者:朝井リョウ/集英社文庫)

本作品は「桐島、部活やめるってよ」の後に作られた朝井リョウによる青春小説です。著者朝井氏の母校、早稲田大学に実在する男子によるチアリーディングチームSHOCKERS(ショッカーズ)から発想を得た作品です。主人公は、怪我で幼い頃から続けていた柔道をやめてしまった大学1年の晴希。親友の一馬と男子チアチームの結成をめざしていきます。キャラが濃く全くまとまりのないメンバーが、チアをしている時だけはひとつにまとまっていきます。2分30秒間の演技の時間と、登場人物の想いがシンクロしていく内容は筆者の緻密な構成によるもの。人を応援することで、自分たちが主役になっていく姿は、新しい面白さがあります。モデルとなった、チアリーディングチームSHOCKERSの演技を動画で見ると、男子ならではのダイナミックな動きに感動します。小説を読む際は、一度動画をみるとより一層楽しめること間違いなしです。

6|青森ドロップキッカーズ(著者:森沢明夫/小学館文庫)

カーリングと聞くと、「名前は知っているけど、ルールはよく知らない」という方も多いのではないでしょうか。冬季オリンピックで初めて映像をみた方も多いはず。素人には、静かな試合で何が起きているのかわかりません。本作品は、カーリングに初めて接する少年の目線で話が進むため、カーリング素人も楽しめる内容です。少年を通じて、カーリングのルール、心理戦など競技の奥深さを体感できます。性別、年齢、職業もちがう4人がチームを組んで試合に出場していく過程を描きます。いじめられっ子の中学生宏海、中途半端な不良で同級生の雄大、再起はかるアスリート姉妹。華やかなヒーローやヒロインは登場せず、ドラマチックな急展開はありません。しかし、各登場人物が抱える等身大の悩みは、どこか自分達に重なります。周りの力を借りながら、ひとつずつ乗り越えていく姿は静かな力強さを感じます。読み進めるうちに、表紙を彩るクローバー、作品タイトル、カーリングと言う競技が一つに繋がっていきます。

7|自転車少年記(著者:竹内真/新潮文庫)

このまま自転車を漕ぎ続けて行けるところまで行ってみたい。小さい時にそんな風に思った人も多いかもしれません。本作品は、主人公が4歳から30歳に至る長い時間を、自転車とともに描いています。猛スピードの自転車で庭につっこみ生涯の親友と出会うところからはじまり、自転車を通じて多くの人と出会っていく主人公。10代でチーム一丸になって挑戦したロードバイクでのインターハイ。現実にぶつかり、人生で初めての挫折と失恋を経験する主人公。挫折と失恋から、ひたすら海を目指し自転車を漕ぎ続ける主人公。大人になったら絶対にできない痛々しいほどの青春の要素が多く登場します。大人へと成長する時間を見守る著者の視点がとても優しく、大人になったかつての少年たちにぜひ手に取ってほしい1冊です。

8|がんばっていきまっしょい(著者:敷村良子/幻冬舎文庫)

第4回坊っちゃん文学賞受賞した本作品は、進学校にある女子ボート部が舞台です、作者、敷村良子の私小説であり、映画化、テレビドラマ化もされました。タイトルの「がんばっていきまっしょい」は、愛媛県立松山東高等学校で1960年代前半ごろから、実際に使われていた気合入れの掛け声だそうです。主人公である悦子は、進学校に入学したのにやりたいことが見つからず焦りを感じています。そんな彼女が自分の居場所を見つけるために、ボード部を立ち上げていきます。仲間を支えながら、自分も支えてもらう。一生懸命なのに、でもうまくいかない。そんな登場人物たちの姿は読者の10代とオーバーラップしてくるかもしれません。大人になったら、「あの時なんでそんなことしちゃったのかな、こうしておけば伝わったのに」ということは多くあります。不器用だけど、周りがみえないくらい一生懸命毎日がんばっていた、戻れない時時間をおもいださせてくれるはずです。

9|武士道シックスティーン(著者:誉田哲也/文春文庫)

剣道に青春をかける真逆の2人をユーモラスかつ爽やかに描いた本作品。成海璃子、北乃きいのダブル主演で映画化され、続編に『武士道セブンティーン』、『武士道エイティーン』及び『武士道ジェネレーション』があります。剣道エリートの香織は、中学最後の大会で、無名選手に敗退。悔しさからその選手を追い香織は同じ高校に入学します。剣道エリートを敗退させた早苗は日舞から剣道に転身した特殊な経歴の持ち主です。勝敗にこだわり武士のような香織と、剣道を純粋に楽しむマイペースでお気楽な早苗。作品は、それぞれの視点から書かれ、同じ時間軸で2人の心がどう変化したのか丁寧に描写されてます。クラスにいたら、絶対に友達にならなそうな、全く価値観の違う2人。そんな2人が剣道を通し、深い絆で繋がっていきます。一気に読み切れる青春エンターテインメント作品です。

10|泳げ、唐獅子牡丹(著者:菊池 幸見/祥伝社文庫)

岩手県の局アナウンサーが書き下ろした異色の青春スポーツ小説です。主人公は黒沢裕次郎。典型的なヒーローとして描かれる主人公は、みていてかなりスカッとさせてくれます。ものすごいイケメンなのに、盛岡弁をまくしたてる黒沢は、普段は青年実業家。裏の顔はヤクザの組長。そして、水泳の名選手でもあります。今も密かに日本新記録に挑む黒沢は、ひょんなきっかけで、地元盛岡のクラブ対抗水泳大会に駆り出されることになります。対抗チームには、仇である熊坂組もからみ先が読めない展開になっていきます。クライマックスの対抗戦に向けて、一気に盛り上げてくれます。サブキャラもいい味をだしてくれ、スカッとさせてくれて、しかも笑わせくれる。そして最後にほろっとさせる小説です。一筋縄ではいかない大人たちの青春を描いた体育会系エンターテイメント。休日に一気によみたい1冊です。

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