今はいろいろな娯楽がある世の中ですが、その中でも手軽で長時間楽しめるのが読書です。
一口に本と言ってもいろいろなジャンルがありますが、今回はその中から高校生から大学生の読書初心者の方にもおすすめできる読みやすい文庫本小説をご紹介していきたいと思います。
1:湊かなえ「告白」
最初にご紹介するのが湊かなえさんの「告白」です。
湊かなえさんと言えば、読んだ後に嫌な気持ちになってしまうミステリー「イヤミス」の女王として知られています。
まさにその真骨頂を堪能できるのが「告白」です。
我が子を校内で亡くした中学校の女性教師によるホームルームでの告白から始まる物語は、いろいろな語り手の視点で描かれています。
語り手が変わることによって最後まで飽きることなく読み進めることができますし、何よりもそこに描かれている人間の複雑な感情に揺さぶられ、読み出すと止まらなくなるはずです。
2:有川浩「図書館戦争」
有川浩さんの「図書館戦争」もおすすめです。
行き過ぎた検閲から本を守るための組織である図書隊に入隊した女の子が主人公ということで、言論統制が進んでいる今だからこそ読んでおきたい作品でもあります。
純粋な恋愛小説としても楽しめますし、甘すぎるくらいの恋愛の世界にどっぷり浸かりたい方には特におすすめです。
世の中のことを考えさせられるのと同時に、胸がキュンキュンする要素もたっぷりなので飽きずにシリーズを読破できるはずです。
3:森見登美彦「夜は短し歩けよ乙女」
森見登美彦さんの作品はどれも独特の世界観があるのですが、その中でも特におすすめなのが「夜は短し歩けよ乙女」です。
「黒髪の乙女」に片想いしてしまった「先輩」を中心に物語が展開していくのですが、「黒髪の乙女」の天然具合が本当に可愛らしいです。
ファンタジー要素ありの恋愛小説を求めている方におすすめの1冊です。
4:朝井リョウ「何者」
朝井リョウさんの「何者」は、就職活動真っ最中の方にとっては重たく感じられるかもしれません。
この作品では就職活動をおこなう大学生同士のやり取り、その中での人間の本音などが本当にリアルに描かれています。
ここ最近は就職活動事情も少し変わりつつありますが、人間の本質的なところは変わらないはずです。
それぞれに考えがあり、それぞれに思うところがあるでしょう。
ただ、部分的に共感できてしまうところもあるだからこそ、より考えさせられるのです。
5:辻村深月「かがみの孤城」
辻村深月さんの「かがみの孤城」は2022年12月にアニメ映画化されたこともあり、タイトルだけは知っているという方も多いのではないでしょうか?
学校での居場所をなくし、閉じこもっていた中学生の「こころ」の部屋で突然鏡が光り始め、鏡の中に入り込むとそこには城のような不思議な建物があり……というファンタジーな世界観が魅力となっている作品です。
思春期ならではの複雑な感情がしっかりと描かれており、高校生や大学生はもちろん、もっと上の世代の方でも楽しめるような小説になっています。
6:森絵都「カラフル」
森絵都さんの「カラフル」はヤングアダルト小説の金字塔とも言われているほどの名作です。
生前に罪を犯した魂である主人公が天使業界の抽選に当たり、自殺を図った中学生の少年の体にホームステイするというところから物語が展開していきます。
天使業界の抽選という発想もなかなか面白いのですが、実際にそういう仕組みがあるのではないかと思わせる表現の巧さも魅力です。
中学生が主人公ではありますが、高校生や大学生でも自殺を考える方はとても多いです。
自殺を考えたことのある方であればあるほど、響くものがあるのではないかなと思います。
7:上橋菜穂子「獣の奏者」
上橋菜穂子さんの「獣の奏者」は「獣の奏者エリン」というタイトルでアニメ化もされている作品です。
ジャンルとしては異世界ファンタジー小説になるかと思いますが、最近よく見聞きするようないわゆる異世界モノとは一線を画していると言っていいでしょう。
しっとりと深く、その壮大な世界観を楽しめる作品です。
読みやすい文章で書かれているので、普段からあまり読書をしないという方や読書はするもののファンタジー系には手を出したことがないという方にもおすすめです。
8:ミヒャエル・エンデ「モモ」
ミヒャエル・エンデさんの「モモ」もおすすめの1冊です。
子ども向けというイメージが強いかもしれませんが、高校生でも大学生でももっと上の世代の方でも楽しめる名作です。
時間泥棒と戦く少女「モモ」の冒険譚なのですが、「時間とは何か」ということを深く考えさせられる作品となっています。
最近では「時短」という言葉をよく見聞きするようになりましたし、時間をかけずにいかに効率や生産性を高めるかという話ばかりです。
この作品を読むことによって、今の世の中のおかしさを改めて痛感できるようになるかもしれません。
9:宮部みゆき「ソロモンの偽証」
宮部みゆきさんの「ソロモンの偽証」は長編推理小説になります。
学校内で発生した同級生の転落死の謎を生徒のみによる校内裁判で追求しようとする中学生たちを描く作品です。
ひとりひとりに背景があり、またテーマ自体も重たいです。
何よりも校内裁判を実現させるまでの過程がまさに今の社会の縮図で、立ち向かう中学生たちの姿からいろいろなことを学ばされます。
10:小川洋子「博士の愛した数式」
小川洋子さんの「博士の愛した数式」もおすすめの作品です。
美しい数式の世界を織り交ぜながら、記憶が80分しか持続しない数学者と母子の交流を描いた作品なのですが、しっとりと優しい世界を感じることができます。
寺尾聰さんと深津絵里さんによる映画のイメージが強いかもしれませんが、映画を見た後でも見る前でも楽しめるかと思います。
「幸せとは何なのか」を考えるきっかけになるかもしれません。
11:梨木香歩「西の魔女が死んだ」
梨木香歩さんの「西の魔女が死んだ」も有名な作品です。
魔女と言っても、一般的にイメージされるようなファンタジーの世界が描かれているわけではありません。
どちらかというとリアルな世界が淡々と描かれているような作品です。
主人公の「まい」の考えることや感じること、そこから口にしてしまうこと……そのすべてとは言わないまでも、誰にでも共感できる部分はあるはずです。
また、人の死というものもテーマになっています。
このご時世だからこそ、読んでおきたい作品のひとつと言えるかもしれません。
12:綾辻行人「Another」
綾辻行人さんの「Another」も有名です。
アニメ化もされている作品で、ホラーでもあり、ミステリーでもあり、サスペンスでもあるという独特な雰囲気が魅力になっています。
アニメでもうまく活かされていましたが、小説だからこそ活きてくるトリックがたくさんあります。
全体的に重たい空気感をまとった作品ではありますが、だからこそ、その世界観にどっぷりと浸かれるのではないでしょうか?
13:宮部みゆき「火車」
宮部みゆきさんの「火車」もおすすめです。
ジャンルとしてはミステリー小説になるかと思いますが、当たり前のことに改めて気づかされる作品でもあります。
日々の生活の中で見聞きするニュースなどの情報というのはそのほとんどが結果だけを伝えます。
例えば、単なる火事として報道されているものでも、その背景には想像もつかないような深い闇が広がっていることもあります。
背景を何も知らないのに、結果だけを見聞きして知ったような、わかったような気になってしまうことは多いでしょう。
この作品では犯人の目線で、なぜそういうことをしてしまったのか、せざるを得なかったのかが丁寧に描かれています。
読み終わった後には、視野が広がっているかもしれません。
14:早見和真「イノセントデイズ」
早見和真さんの「イノセントデイズ」は長編ミステリーなのですが、かなり重たい内容となっており、読み終わった後もしばらく何とも言えない気持ちが続くかもしれません。
本当に日々のニュースなどで見聞きするようなありがちな事件なのですが、その事件を掘り下げていくとひとりの女性の壮絶な人生が明らかになっていきます。
こういう作品に触れると、自分たちがいかに狭い世界しか見ていないのか、その中で井の中の蛙になっているのかを思い知らされます。
物事の表面だけではなく、その奥にある背景にまで目を向けなければいけないと痛感させられるはずです。
15:萩原浩「噂」
萩原浩さんの「噂」も読みやすくて、おすすめの作品です。
ジャンルとしてはサイコサスペンスになるかと思います。
この作品は最後の1行が大きな意味を持ってくるのですが、最後の1行だけ読んでも意味はわかりません。
最初から最後まで読んだ方にだけ意味がわかるようになっていますので、そういったところでも最後まで読み切ってほしい作品です。
最後の1行の意味がわかってから、読み直してみるとまた違った楽しみ方ができるでしょう。
16:重松清「きみの友だち」
重松清さんの「きみの友だち」はタイトルの通り、「友だち」についていろいろなことを考えさせられます。
もともと友だちの定義というのは難しいものです。
学校で一緒にいる時間が長ければ友だちなのか、一緒に遊びに行くことが多ければ友だちなのか……友だちの本当の意味をわかっている方はあまりいないはずです。
だからこそ、この作品を通して改めて友だちの本当の意味を考えてみませんか?
重松清さんの作品は優しく、気づきや学びを得られるようなものが多いです。
それでいて読みやすいので、読書初心者の方には特におすすめです。
17:恒川光太郎「夜市」
恒川光太郎さんの「夜市」はホラー小説を読みたいという方におすすめの1冊です。
妖怪たちがさまざまな品物を売るという夜市を舞台にしたホラーなのですが、最初から物語の世界にぐっと引き込まれると思います。
恐怖が迫ってくるような単なるホラーではなく、どちらかというと切なさや哀愁といったもののほうがより強く感じられます。
ずっと浸っていたいような世界観、読み終わりたくないような感覚を体感することができるでしょう。
18:小松左京「復活の日」
小松左京さんの「復活の日」は生物化学兵器として開発された菌によって人類が滅亡するというまるで新型コロナウイルスによるパンデミックを予言していたかのような作品です。
実際に生物化学兵器が開発されている今だからこそ、読むべき作品とも言えます。
ジャンルとしてはハードSFになるかと思いますが、新型コロナウイルスのパンデミックを経験した現代人が読むと何気ないひとつひとつの描写がよりリアリティーを持って感じられるはずです。
文章としては読みやすいものの、何度も何度も心が揺さぶられるのでそういった部分でも読み応えがあるかと思います。
19:伊坂幸太郎「死神の精度」
伊坂幸太郎さんの「死神の精度」は死神と人々の交流を連作短編形式で描いた作品になります。
死神はさまざまな境遇の男女6人と出会い、それぞれに判断を下していきます。
当たり前のことなのですが、人の数だけいろいろな人生があるものだなと気付かされます。
短編だからこそ、とりあえずはサクっと読書を楽しみたいという方にもおすすめです。
20:乙一「箱庭図書館」
最後にご紹介するのが乙一さんの「箱庭図書館」です。
ボツになった小説を読者から募集し、乙一さんが自由に物語をリメイクするという読者参加型企画によって生まれた短編集です。
ミステリーやホラー、恋愛などいろいろなジャンルが含まれている短編集なので、1冊でいろいろな角度から乙一さんの文章を堪能することができます。
もともと人気の高い乙一さんですが、初めての1冊としてもおすすめです。
読書を通して心を豊かに
今回は高校生から大学生編ということで、読書初心者にもおすすめできるような読みやすい文庫本小説をご紹介しました。
どれも魅力的な作品ばかりです。読書を通して、心豊かに生きていきましょう。