日本には今たくさんの種類のビジネス本というものが出版されています。
というのも、ビジネス本というものはなかなか線引きが難しく、自己啓発本も経済評論も、はたまた経営者一代記のようなものも、ビジネス本といえばビジネス本なわけです。
そんな、数多くあるビジネス本の中で、今回は、教育関係者ならぜひ読んでおいてほしい、教育に関するものをピックアップしてみました。
教育の本体というより傍論になるものが多いのですが、教育者の知識の一端として、役に立つものであることは確かです。
1|保育園義務教育化(著者:古市憲寿/小学館)
最近テレビで見ない日はないというくらい露出頻度の高い社会学者の古市氏。
そんな古市氏が、幼児教育の必要性について表したのがこの本になります。
しかし、そこは教育学者ではない古市氏の視点ですから、普通のよくあるモノとは全く切り口が違い、その切り口は、幼児教育を義務化することの収益性といった類のいわゆる「実利」論。
教育関係の書籍において、この実利を説くというのはなかなか珍しく、特に幼児教育となると、どちらかというと感情的な側面に走りがちなところを、この本は徹底して実利を説いています。
しかも、そんな実利を求める主張に対して、数々のデータや統計をもって分析していくという、おおよそ教育関係の書籍では見たことのない内容。
実利をもって教育を考えるというのは、実は教育者や先生の不得意なところ。
しかし教育の原点が国力の向上であったことを考えれば、ある意味教育論の原点に近いと言えるのではないでしょうか。
2|やり抜く力 GRIT―人生のあらゆる成功を決める「究極の能力」を身につける(著者:アンジェラ・ダックワース/ダイヤモンド社)
ビジネス本として、確固とした地位を確立している本書。
粘り強さというものを中心において、その粘り強さこそが成功というものにつながる要素であるという論を展開することで有名な書です。
当然、ビジネス本なのですが、著者はマッキンゼー卒の教員であることから、その内容は非常に教育に通ずるところのある内容となっています。
教育において粘り強さ=グリットをいかに高めていくのか。
このグリットという抽象的な概念をスコア化し、データを基に分析していくことで、成功者を作り出す教育が見えてくる。
もちろん世の中そう簡単に行くものではありませんが、教育というものを考える時、日本の教育界に欠ける「成功者」を目指すという観点がそこにはあります。
教育というものを神聖視しすぎる日本の教育界においては、教員や先生にぜひ読んでほしい内容であることは言うまでもありません。
3|モチベーション3.0 持続する「やる気!」をいかに引き出すか(著者:ダニエル・ピンク/講談社)
続いても、ビジネス本として名高い本書。
行動学者が見つめてきた内発的動機付け、つまりモチベーションをビジネスの世界に応用し、ビジネスにおけるモチベーションの価値について論述したことで人気を博した本書ですが、それはそのまま教育にも応用できる内容。
というのも、やはり教育というのはやはり社会の縮図でなくてはいけないからですね。
教育を受ける生徒たちも、将来は当然ビジネスパーソンとなっていく人が大勢いるわけですから、そのロジックを教育に取り入れることはよくよく菅賀れば何も不思議なことはありません。
むしろ、ビジネスにおけるモチベーションの成果は、教育においても同様の成果をもたらすことは自明ですから、生徒たちのモチベーションを上げ成果を出すという点においては、確かに効果のある本であるといえるでしょう。
才能があっても、やる気がなければ成果は出ない。
これはなにもビジネスの世界のはなしだけではなく、教育でも同じなのですから。
4|世界はひとつの教室 「学び×テクノロジー」が起こすイノベーション(著者:サンマル・カーン/ダイヤモンド社)
遠く離れた土地に住む12歳のいとこに数学を教えなくてはいけなくなった著者。
そこで彼は、ユーチューバーとなって算数の解説動画を、延々と上げ続けることになったのですが、気が付いたら、小学生用の算数から、なんと大学レベルの経済学まで延々とアップし続けることになってしまったのです。
一見、努力と信念の人ではあるもの「なんという暇人か」という感じではありますが、そんな彼がたどり着いたのは、ITと教育のマッチアップがもたらす新しいイノベーションの可能性。
結果、彼のこの行動はビル・ゲイツの出資を受けるまでん社会的影響力が肥大し、教育とITの可能性を考えるうえで書くことのできないファクトとなったのです。
本書には、その流れの一部始終が書かれています。
これからの教育界において、避けて通ることのできない教育とITの融合の時代を迎える前に、教育者や先生にはしっかりとした認識が必要な事柄なのです。
5|予備校なんてぶっ潰そうぜ(著者:花房孟胤/集英社)
いまでしょ!の、林先生で有名な東進衛星予備校。
そんな東進衛星予備校のビジネススタイルに反発を覚え、教育を施すことに金をとるというシステムをぶち壊すべく立ち上がった著者の自伝。
そうこれは、教育というものの価値に対する挑戦であり、到達する可能性のある一つの未来です。
教育者や先生といわれる人たちは、必ずしも公務員ではありませんし、中には塾や予備校の先生もいる事でしょう。
そういった方たちにとって、この本の内容は、まさに自分の生活を脅かす内容であり、そして、なんとしてもこれの上をいかないといけないという使命感を感じるものです。
と、同時に、教育者や先生というスキルを持っている人にとっては、新しいビジネスの可能性を感じるもの。
結果、この著者の考えたビジネスモデルは破綻をきたしてしまっているのですが。今後の教育界に一石を投じた一つの出来事としても、押さえておくべき内容です。
6|下流志向 学ばない子どもたち 働かない若者たち(著者:内田樹/講談社)
昭和という時代を知っている人ならば感じる、現代の若者や子供たちのモチベーションの低さ。
子供たちは勉強をするということに勝ちを感じなくなり、そして、若者たちは、がむしゃらに働いてお金を稼ぐということに執着しなくなった現代。
その社会の変化とはいったいどこからくるものなのか。
これからの日本社会に不安を感じつつも、そこにいる、自分たちの作った今の社会の影響を受け、自分たちの教育のたまものとして存在する子供たち。
そんな子供や若者の意欲の欠如から目を背けず真っ向から解き明かそうとするのが本書。
いまや「先生の子供の頃はね」という思い出話を語ったところで、その心に意欲が生まれなくなっている子供たちの、その根源に迫る怪作で、まさに哲学者の視点。
今の時代とそこに生きる子供たちの本質を見極めて、そこのマッチした教育を施すためには、一度読んでおきたい本ですね。
7|35歳までに必ずやるべきこと(著者:重茂達/かんき出版)
これもまた、ビジネス書としてかなり有名な本です。
ビジネスの世界において必要なものと問われると、人はすぐに、世界的視野から見た国際状況や時代の流れの中に生まれた新しい理論への理解を考えてしまいがちです。
しかし、本当に必要なことは、実は常識そのものです。
いかにできる人間であっても常識を伴わないようであれば、その人間は一流ではありません。
という理屈は、何もビジネスパーソンにのみ当てはまるのではなく、先生や教育者にも当てはまること。
特に、先生や教育者という人たちは社会の一般知識に欠けていると思われがちな職業でもありますので、こういった本を読んでおくことは大きな力になります。
また、同じことが生徒にも言えるとヵんが得れば、教育そのもののヒントにすらなりうる良書です。
8|心を整える。勝利をたぐり寄せるための56の習慣(著者:長谷部誠/幻冬舎)
世界を股にかけるファンタジスタで、元日本代表のキャプテンでもあるサッカー選手の著書。
そんな彼が、選手として経験した中で、最も大切だとたどり着いたのが本書のタイトルでもある「心を整える」という行動の原理。
幼少の頃から積み重ねてきた心を整えるためのメソッドがあますところなく書かれている本書は、当然子供の教育における大きなヒントとなるでしょう。
しかし同時に、これは、教育者や先生の生き方においても大きなヒントとなるもの。
中でも、心を整えることと同義であるかのように主張されている準備の大切さ。
子供の教育を施す、または授業で学習のリードをしていくという場面において、いかに準備を怠らないで取り組む必要があるのかということをしっかりと学べる一冊です。
9|仕事は人間関係が9割(著者:宮本実果/クロスメディア・パブリッシング)
現代の子供たちにおいて、大きな問題となっている人間関係という言葉。
ネットやSNSにおける、ITネットワークを介して行われる人間関係の構築が、これから人間にどういった変化をもたらすのかは、誰にも分らないものといっていいでしょう。
しかし、教育者や先生である以上、子供たちに人間関係を教えていかなければいけません。
そんな時役にたつのがこの本。
人間関係というものを現代社会の中でいかに構築し、普段に人間関係とビジネスの人間関係をどのように区別していくかを学べる本書はまさにこれからの人間関係の手引きとでもいうもの。
たとえそれが子供たちにそのまま流用できるものではなかったとしても、人間関係という一つの事柄への理解を深めるうえで、読んでおきたい一冊です。
教育は全方向性の高い知識の結晶
教育というのは、何も教育学だけで学べるものではありません。
子供に教育を施すというのは、ある意味人材育成の分野であり、また、そのためには、社会の動向やこれからの時代への考察、心理学、社会学とあらゆる方面の知識が総合的に勘案されていないといけないものです。
そう考えると、こういったビジネス本の中に教育のヒントがあるのは、ある意味当たり前のこと。
むしろ教育者や先生にこそ、こういった本は積極的に読んでほしいといっても過言ではないでしょう。
コメントを残す