先生や教育者は、先生と呼ばれるようになったその時は、まだ一人前ではありません。
先生や教育者として現場で学び、現場で経験を積む中で一人前となっていくのですが、だからと言って何年もそこに時間をかけるわけにはいかないわけです。
というのも、そのうち教育者として、責任ある立場にならないといけないわけですからね。
そこで今回は、そんな教育者の方々のために、役に立つ本集めてきました。
1|学校って何だろう―教育の社会学入門(著者:苅谷剛彦/筑摩書房)
教育というものの原点について逃げずにしっかりと考えてある本書。
著者は、教育関連の書籍としては知らない人はいないといってもいいほど、日本の教育に関しての権威である東京大学大学院教育学の教授。
そんな、権威中の権威である著者が考えるのは、学校とは何ぞや、というかなり根源的な問い。
そして、生徒から真っ向勝負で質問された時に、果たしてどう答えていいのか、現役の教師ですら答えに窮する、根源的な問題だといってもいいでしょう。
どうして勉強をするのか、どうして学校に通わなくてはいけないのかといった誰しもがいつかは通ったことのある質問から、校則や様々な質問に答えていく中で、学びの意義に迫っていく。
教育というものに対するシンプルな質問をしっかりと逃げずに考えていくことで見えてくる教育の姿がここにあります。
2|勉強するのは何のため?―僕らの「答え」のつくり方(著者:苫野一徳/日本評論社)
これもまた、教育の根源にかかわる問題について考える一冊。
前段で紹介した、『学校って何だろうと』ほとんど同じ問題を考えながらも、この本ではそれとは違う考え方の一つを提示してくれています。
はっきりって、そこに完全なる正解は存在しません。
そこにあるのは、様々な角度から考えられた、同じ問題に対する違ったアプローチと、そしてその違ったアプローチの中でたどり着いた違った結論。
しかし、実は、こういう違った考えの違ったアプローチを見る事こそ、教育者にはやっておくべきことなのです。
教育の現場で、子供たちは、様々な考え方を投げかけてきます。
そして、その考え方ひとつひとつに対して教師がどういう対応をするか、その一つの練習になることでしょう。
3|「学力」の経済学(著者:中室牧子/ディスカヴァー・トゥエンティワン)
教育学は心の学問であると同時に、マネジメントに通じる学問でもあります。
そんな教育のマネジメントに通じる側面を突き詰めていくことで存在する「教育経済学」はデータをもとにして教育を経済学の手法で分解し理解していく学問でありこの本の根幹。
特に教育というのは個人の主観や価値観、経験や思い入れ、下手をすると特異な思い出がその主張の根幹をなす場合があります。
もちろんそれも一つの帰結点ですが、やはりそこには客観視が足りない面もあります。
そんな時、この本を読んで、データを基にした客観的な事象から導き出される教育論に一つの指針を求めるのもよいのではないでしょうか。
4|マシュマロ・テスト 成功する子、しない子(著者:ウォルター・ミシェル/早川書房)
行動科学の世界では有名な、マシュマロテスト。
今すぐ一つのマシュマロをもらうか、それとも今は我慢してあとから二つ貰うのか、というこのテストの被験者の人生を半世紀にわたって追跡調査して、長大な研究の記録が本書。
人間の成長において、自制心というものがもたらす効果。
そして、この自制心と成功との関連性を知らべて行く中で、人間の才能という天賦のギフトとされるものの根幹に迫ろうという壮大な試み。
この本を通じて、教育者が学ぶことは、教育の限界点。
もしくは教育が目指すべき目標の、その天井の高さというべきものかもしれません。
人生で成功する人間というのは、子供の頃からもうすでに決まっているのか、それとも、そこに教育が介在することで、人間の成功確率そのものを変えることができるのか。
その答えの一つが、ここにあるのです。
5|ザ・ギフティッド 14歳でカナダのトップ大学に合格した天才児の勉強法(著者:大川翔/扶桑社)
9歳でカナダ政府から天才児認定をされ、14歳で高校卒業という天才の教育の記録。
カナダの名門である5つの大学が、奨学金の上乗せ合戦をしてまで自校に引き込もうとするほどの天才である大川翔氏の教育法の真実に迫る本です。
では実際教、育者はここから何を学べばいいのか。
それは、いいかにして転載を作り上げるのか、という天才の作り方ではなく、この中から教育者として教育の意義とは何ぞやを考えるきっかけにして欲しい一冊です。
成功例をそのまま真似して、同じ結果を求めるのは素人のすること。
そうではなく、この天才の作り方とでもいうべき一例をもとに、自分が目指す教育との間でその意味をしっかりと分析し考えてこそ、教育者というもの。
ひとつの極端な例をもとに、教育を見つめなおすきっかけとなる本なのです。
6|ゼロから学べる学級経営―若い教師のためのクラスづくり入門―(著者:長瀬拓也/明治図書出版)
まさに、新しく教育者や先生になる人にとってのハウトゥー本とでもいえる本がこれ。
いまや、学級崩壊という言葉は、当たり前になりすぎて話題にされなくなるほど一般化し、様々な学校を取り巻く問題や社会の変化の中で学級経営のむずかしさは、かつての比ではありません。
ここを間違えると、一年間、最悪な教育環境の中に存在することになる、そんな重大問題。
そんな、ある意味最も大事な学級経営について、わかりやすく解説し、そして、様々な項目についてしっかりとした解説がなされ、細やかで丁寧な説明がなされている本書。
まったくもってどう手を付けていいのかわからない人でも、しっかりとわかるようになっている、まさに「ゼロ」から学べる本です。
さらに各項目には、著者が進めるおすすめの本まで紹介されていて、クラスを持つ前にしっかりと学んでおきたい人には必見の内容です。
7|プロの教師のすごいほめ方・叱り方(著者:佐藤幸司/学陽書房)
人間はほめて育てるべきか、叱って育てるべきか。
もちろんそれは、どちらかでしかありえないという二者択一の物ではありませんが、自分が軸足をどっちにおいて教育に携わるかというのは、教育者の個性という点においても大事なこと。
そんな、ある意味教育者にとって究極の選択をする際に、その大きなヒントとなるのがこの本。
この本には、様々な場面においての著者の見解が説明されているのですが、本のタイトルとは少し趣が違って、この著者はかなりほめる方に軸足を置いた人であることがわかります。
しかし、あなたがそういう教育者に向いているかどうかはまた別の話。
とはいえ、生徒という形のない存在し対して、いかに適切に対応していくのかというその姿勢は当然見習うべきものでしす、自分がこの本の内容に賛成できるか否かでその立ち位置の設定にも大きく役に立つでしょう。
やはりこれも、その通りにやるというのではなく、自分の教育を決める一つのテストケースととらえるべき本なのです。
8|不登校は1日3分の働きかけで99%解決する(著者:森田直樹/リーブル出版)
本の紹介としてあまり褒められたいい方ではないですが、不登校の解決はそんなにうまくいくモノではありません。
不登校を取り巻く問題の根の深さは深く、また人によってその解決の糸口は全く違い、それこそ家庭環境や地域性も考えていくべき問題である以上、99%解決する方法というのは言い過ぎ。
しかし、だからこそ読むべき本でもあります。
著者の経験の中で、完璧にこれで間違いないという確信があるからこそ、99%という言い方をしている不登校の解決法について書かれた本。
それを答えとして読むのではなく、一人の人間がたどり着くことのできた不登校という根の深い問題の解決策を知っておくことが、教育者としての幅になることは間違いありません。
自分の経験の補完としても、読んでおきたい一冊です。
9|将来の学力は10歳までの「読書量」で決まる!(著者:松永暢史 /すばる舎)
教育者の中には、当然幼児教育に携わる人も多くいるでしょう。
そんな、幼少期の教育の一つの解として、読書をたくさんさせることで、幼少期に身につけておきたい基礎学力を高めることを提唱しているのが本書。
しかも、本書の中で取り上げられているものは、読書がいかに良いものであるのかということだけではなく、子どもを本好きにする方法にも言及されています。
実際、読書をするようになるのかどうかは、この本好きになるかどうかにその成否のほとんどがかかっています。
読書の大切さに触れながら、子供が進んで本を読みたくなるその方法にまで触れている本書は、ある意味本好きの作り方ともいえる本なのです。
10|板書 きれいで読みやすい字を書くコツ(著者:樋口咲子、青山由紀 /ナツメ社)
最後は、教育者先生になる人だからこその悩み、板書。
あまり教育本で触れられることのない内容ではありますが、間違いなく生徒のモチベーションに大きくかかわってくることは、きっと生徒であった時の経験でわかっていることでしょう。
番所の下手な先生の授業って、つまらなかったですからね。
この本では、板書のレイアウトから色の使い分け方法といった実践的かつ子供の興味を引く板書テクニックの基本がしっかりと書かれていて、先生を目指す人にはぜひ読んでおいてほしい内容になっています。
基本的なことではありますが、大事なことですよね。
選択肢の一つとして。
教育に正解はありません。
誰に教えるのか、何に教えるのか、そして誰が教えるのか。
そんな様々なファクトによってその最適解というものは変わってきますから、ここに書かれてある本の通りにすれば絶対に成功するというものではないのです。
しかし、様々な事例からその答えを導き出すのも、先生や教育者の仕事。
ぜひ、価値ある一例として、ここで紹介した本を読んでみることをお勧めします。
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