美味しいご飯が食べたくなる!おすすめのグルメ小説10選

1|ヒカルの卵(著者:森沢明夫/徳間文庫)


舞台は、とある限界集落。主人公の養鶏農家村田二郎が、ある日突然「俺、店を出すぞ」といいだすところから物語はスタートします。場所は森のど真ん中、メニューは卵かけご飯だけ、しかも食事代はタダ!という無謀すぎる計画に村人は大反対・・・。しかし養鶏場を担保に、人生を賭ける大勝負に出る二郎。さて二郎の夢は叶うのか。田舎の原風景とともに、大人のファンタジーとして楽しめる1冊になっています。た仕事で疲れた時に手にすると元気がもらえるかもしれません。そして、読後は卵かけご飯はが絶対に食べたくなります。

2|パンとスープとネコ日和(著者:群ようこ/ハルキ文庫)


2013年にはWOWOWテレビドラマとして、小林聡美、もたいまさこ、伽奈のキャストで映像化もされた本作品。主人公は、出版社勤めのアキコ。母を突然亡くしたアキコは出版社を辞め、母親がやっていた食堂を改装してお店をはじめます。お店のメニューは「サンドイッチとスープ、サラダ、フルーツ」。近所にこんなお店があったらふらっと寄りたくなる、そんなアキコのお店。そのお店に集う人々とアキコの静かな暮らしを軸に、ストーリーは進みます。前半は静かで淡々として印象ですが、物語の後半は、アキコのルーツや母との関係、ネコのたろを中心に、ドラマティックな展開になっていきます。寝る前に少しずつ読めるそんな物語です。

3|東京すみっこごはん【シリーズ】(著者:成田名璃子/光文社文庫)


家族揃って一緒に夕食を囲む、忙しい現代ではそんな食卓はまれかもしれません。そんな孤食の時代に、東京の片隅にある食堂を舞台にしたのが本作品です。商店街の片隅にある一軒屋、この食堂のルールは「台所に立つのは基本的に1人。当日集まったメンバーでくじ引きをし、料理当番を決める」こと。赤の他人が集まり、各人がお金を出しくじ引きで負けた人がその日の調理当番というユニークな仕組みで、食堂がまわっています。当番はレシピノートから好きなものを選び、料理をして最後はみんなで食べる。たったこれだけのことですが、この場所は、事情を抱えた人々にとってはなくてはならない場所になってきます。おいしい家庭料理だけでなく、訳ありの人々のストーリーが絡み合いドラマとして楽しめます。人々の温かな交流を描いた本作品は、硬くなった心がほっとほぐれるそんな時間をつくってくれます。

4|あつあつを召し上がれ(著者:小川糸/新潮文庫)


食事の風景を軸に、静かな感動を引き起こす本作品。母親から教えてもらったお味噌汁、去る人が大好きなスイーツ、別の人生を歩む2人の朝食など7つの短編がつまっています。人生の分岐点にたった時に、誰と何をたべるのか。丁寧に紡がれる作品は深い感動とともにあたたかな気持ちにさせてくれます。7つの短編は、愛する人を亡くしたり別れる前の恋人同士など一見すると悲しい話です。食事の風景とともに、少しずつ前に進んでいこうというする登場人物たちの姿に愛おしくなります。

5|みをつくし料理帖(著者:高田郁/ハルキ文庫)


舞台は庶民文化が花開いた文化文政、主人公は天涯孤独な少女、澪。料理の腕を頼りに江戸へいき一流の女料理人を目指す物語です。シリーズは全10作品になり、NHKでもドラマ化され、2020年には映画化も決定した本作品。「みをつくし」は「身を尽くし」の意味、目の前に立ちふさがる数々の問題を乗り越え、まっすぐに生き抜く主人公の姿には心に刺さります。お互いがお互いを思いやりながらひとつひとつ問題を乗り越えて行きます。そして主人公澪の作る料理はとにかくどれも美味しそう!主人公澪とともに、読者が「初めての江戸」を楽しめるようにと時代考証を行い、作中に登場する料理は著者自身が実際に作り再現して作り上げたそうです。各巻の巻末には、登場する料理の実際のレシピ「澪の料理帖」が掲載されています。料理とともに、主人公の成長物語として楽しんで読み進めてみてはいかがでしょうか。

6|まぼろしのパン屋(著者:松宮宏/徳間文庫)


パン、ホルモン、おでん。食べ物をめぐるちょっと不思議な物語です。表題にもなっている「まぼろしのパン屋」は、見知らぬ老女にパンをもらったことから人生が動き出した、サラリーマンのお話。2話目は一癖も二癖もある医者を主人公にした神戸の焼肉が登場する「ホルモンと薔薇」。最後は、ヤンキーあがりの主人公と姫路おでんをテーマにした「こころの帰る場所」。どれも庶民的な食べ物を軸に、いい意味で人間くさい物語です。シニカルさも含まれた大人のファンタジーのような雰囲気です。「幸せとはなんだろう」その問いに優しく向き合った3つのお話は、疲れた大人をそっと包み込んでくれるはずです。

7|キャベツ炒めに捧ぐ(著者:井上荒野/ハルキ文庫)


舞台は、東京の商店街にある「ここ家」というお総菜屋さん。ここを切り盛りする3人の女性の日常を描いた作品です。こだわったご飯、肉じゃが、コロッケ、ロールキャベツ、ひじき煮、がんも、フライ、茄子の揚げ煮。季節ごとかわる「ここ家」のお惣菜は、どれもおいしそう。とにかく空腹では読むとつらくなります。切り盛りする3人は、60代を迎えてなお毎日おいしいお惣菜をつくり、よくしゃべって、笑って、楽しく暮らしています。しかし、それぞれ人生になにか抱えている様子。オーナーの江子は離婚をし、麻津子は、想いを寄せる幼なじみの年下の彼。郁子は、子どもと旦那と死に別れそれぞれ、消せない悲しい過去や切ない想いを抱えています。特別ではない誰にだってそれぞれの過去があり、答えがでないまま折り合いをつけながら 生きていくのかもしれない、明確な答えを出さなくてもいいのかもしれないなと感じることができる作品です。美味しそうな季節のお惣菜とともに展開される大人の素敵なお話です。

8|かもめ食堂(著者:群ようこ/幻冬舎文庫)


2006年に映画化され、ロングヒットした本作品。シナモンロール、熱々のおにぎり、生姜焼定食など登場した料理にも注目があつまりました。物語の舞台は、フィンランドのヘルシンキある架空の「かもめ食堂」。日本人であるサチエが店主をつとめ、メインメニューは彼女が握る「おにぎり」。地元の住民には、奇異な目でみられながらも動じることなくお店をオープンします。
しかしお客は日本おたくの青年たったひとり・・・。日本人女性、ミドリとマサコが店を手伝うことになります。すこしおかしな人々が引き起こすハプニングは、くすっと笑わせてくれます。小説では、映画版には描かれていなかったサチエ、ミドリ、マサコの3人がフィンランドにたどり着くまでの経緯が細かく描写されています。映画を観た後に原作小説を読みでみると、さらに物語を味わうことができます。焼きたてのシナモンロール、ホットコーヒーととも休日にゆっくり読みたい1冊です。

9|侠飯(著者:福澤徹三/文春文庫)


2016年にテレビドラマ化された、ヤクザがおりなす異色のグルメシリーズ小説です。主人公は、食にうるさく綺麗好きな組長柳刃 竜一。彼はかなり食にうるさいが金をかけるグルメではなくちょっとしたコツを得意としています。就職活動中の大学生、リストラ対象になったサラリーマン、闇金の雇われ店長、多忙な国会銀秘書など濃いキャラクターが脇を固めます。一見、料理の話かとおもいきや実は仕事や人生に対する名言が数々登場するのも見逃せません。生きていくための知恵や、勇気をもらい、最後はほろっと泣かせてくれる物語です。厳しい世界で育った柳刃から、若者たちへのエールがつまった1冊です。笑って泣ける異色のグルメ作品、一読をおすすめします。

10|旅行者の朝食(著者:米原万里/文春文庫)


いわゆるグルメエッセイですが、本作品には「見たことがない。食べたことがない」料理ばかりが登場してきます。ロシア語通訳として活躍する著者が体験した、外国文化に触れた戸惑いや勘違いが、ユーモアたっぷりに書かれています。「旅行者の朝食」というヘンテコな缶詰、一度食べたら忘れられないトルコ蜜飴、瓶詰めのキャビア、ギリシャのお菓子ハルヴァ、衝撃的な山羊チーズ、誰かに話したくなる食べ物の話がつまった1冊です。旅行気分を味わいながら、未知の食べ物を手に入れるワクワク感が楽しめる本作品。日常に飽きてきたら手にしてみるといいかもしれません。

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