本好きだからオススメできる!現代小説10選

小説を人に勧めやすいのはやはり現代小説。
特に、読書があまり得意でない方の入門としてはかなりハードルの低い分野でもありますし、本好きとしてはぜひ読書好きになってもらいたいので、勧め甲斐のあるものです。
まあ、最近はファンタジーもそんな感じですが。
でも、やっぱり今の時代がリアルにわかる現代小説は、よいものです。
ぜひ参考にしていただいて、本好きへの道をまっしぐらに進んでいってほしいものですね。

1|下町ロケット(著者:池井戸潤/小学館)

言わずと知れた大人気ドラマの原作である下町ロケット。
本当にこの人の書く小説がドラマ化されると、びっくりするくらいに視聴率が取れますので、きっと見たことのある人も多いと思います。
しかし、やはりここは本として活字で読んでいただきたい。
特にこの下町ロケットに関しては、普段小説まったく読まないであろう理系のエンジニア志望の方なんかに読んでもらえるときっとはまってしまうこと間違いありません。
しかも、文章は簡単な表現ですし、ストーリー構成もシンプル。
ただただ表現力の高さと、物語の振興のうまさ、そして何よりストーリーの面白さでぐんぐん読み進めることのできるまさにエンターテインメント小説の見本のような作品。
それでいて、一流のビジネス書にも負けないくらいの社会派の内容。
それこそ、今後ベンチャー企業などを考えている人は一度読んでおくことオススメしたくなるほどのリアリスティックな描写です。

2|リバース(著者:湊かなえ/講談社)

人間の内面のドロドロした黒い部分をえぐり出させたら右に出る者のいない湊かなえの作品。
望夫論本作も、そんな人間の内面に手を突っ込んで中から内臓を引きずり出すようなことをしてくるのですが、作者の多作品に比べると結構ライトなテイストになっています。
それでも、淡々と描写される人間の内面に関しては、もうさすがです。
主人公も、とにかく内省的で内罰的、劣等感にさいなまれてまるで影のように生きていく様は湊かなえの持つ人間という生き物に対する思いが現れていて良いですね。
そして、ラスト。
この本を読もうと思われた方は絶対にこの本のラストとを人に聞いたりしてはいけませんよ、それくらい衝撃的で鳥肌の立つラストです。
なぜこの物語のタイトルがリバースなのか、そこには作者のどんな意図が込められているのか。
むしろこの本のすべては、この表題の意味を示す衝撃のラストに向かって続く助走でしかなかったんだと気づかされる本当に素晴らしいラストです。
ちょっと助走が長すぎるかもしれませんが、その長い助走に報いるだけの大ジャンプです。

3|夢をかなえるゾウ(著者:水野敬也/飛鳥新書)

書籍オススメ系の記事が好きな人はもう見飽きたかもしれませんが、やはりおすすめしないわけがいかないこの作品。
またオススメされていない人がいたら、またオススメされてはいるもののまだこの本を手に取って読んでいない人はぜひ読んでいただきたい、それほどまでに本好きに愛される名著です。
一応小説のジャンルとしては、若干ファンタジーが入ってはいますが現代小説。
いきなりゾウの格好をした関西弁の神様が現れるあたり、完全なファンタジーじゃないかと思われてしまいそうですが、まさに現代を切り裂く内容。
自己啓発本や、中にはビジネス書としても使えるという人がいるほど人間社会の様々な事柄に切り込んでいくその内容は見事の一言です。
しかも、文章自体が本当にライトで読みやすい。
全体的に面白く、この面白いとは声を出して笑うレベルの面白さですが、ユーモアにあふれていますので、本当に活字嫌いの方から読書好きまでみんなが読んで共感できる内容。
今何かを始めようとしている人や悩み落ち込んでいる人、人生の転機にいる人には本当にオススメです。

4|クライマーズ・ハイ(著者:横山秀夫/文春文庫)

1985年の出来事は現代か?と言われれば時代の流れの速さの中で疑問点もありますが。
それでもやはり現代小説としての、この作品のできは素晴らしく。またこの本を通して過去日本に起きた大惨事について知ってほしい。そんな小説です。
内容は、御巣鷹の尾根に墜落した日航機、つまり日航ジャンボ機墜落事故に翻弄される地方新聞の記者の話で、扱っているタイトルの内容からも、非常に重みのあるストーリー。
日航ジャンボ機墜落事故という未曽有の大事故。
そんな人間の生き死に現場を伝える新聞社では、社内の派閥争いによる権力闘争が起きていて、事故そっちのけで策謀に走る醜い人間の姿。
そんなメインストーリーに主人公の友人の死亡事故や、家庭での問題などがクロスオーバーして、人間とは何か、生きるとは死ぬとは何か、命とはどういったものかという根源に迫る問題がたたきつけるように語られていきます。
読み終わったとき、きっと深いため息とともに自分の生きている意味を考えることになるはずです。
そんな人生観を変えるような本好きにはたまらない一冊です。

5|還るべき場所(著者:笹山稜平/文芸春秋)

日本ではあまりお目にかかることのない、それでも世界で入って陰陰気を博している山岳小説。
そんな山岳小説の中で、とにかく間違いなく勧めることができるのが、この還るべき場所という名著です。
に欠かせないのは、もちろん人間ドラマやスリル満点の展開などもそうですが、やはり雄大な山岳の風景と空気感をどれだけ表現できるかという点に集約されます。
そして、その点において本作品はまさに絶品。
高度8000メートル以上という世界第二位の高峰K2に挑む物語なんですが、その極限状態の自然が息詰まるほどに迫って感じられる圧倒的筆力。
それだからこそ、その場で繰り広げられる自然との攻防が現実感をもって浮き彫りにされ、その場にいて共に過酷な環境に耐え忍んでいるような錯覚をおぼえさせられます。
だからこそ、最後に到達するラストシーンの爽快感は何物にも代えがたい感動を呼ぶのです。
大げさではなく、この本を読んだあとは登山家になって世界の山に挑んでやろうかなと思えるほどに、山岳登山の魅力を凝縮して詰め込んだ一冊。
ぜひ読んでみることを、本好きの名に懸けておすすめいたします。

6|とらドラ(著者:竹宮ゆゆこ/アスキー・メディアワークス)

一応ラノベというジャンルではあるのですが、非常に面白い作品なのでご紹介します。
ただし本当に特殊な文体と言いますか、なかなかなじめない文体ではあるので最初はかなり読みづらく感じるかもしれません。
他で出来れば最初は我慢して読んでみてください。
3巻あたりからきっと文体にも慣れてくると思いますし、5巻を過ぎればどんどんと話に引き込まれて行ってあとは最後まで一気に読み進めることができると思います。
そしてそれは、かなり面白い衝撃を持ってラストに進んでいくはずです。
ライトノベルでしかも恋愛もの。
こういったジャンルに関しては、ただただ軽々しく若者がきゃいきゃい恋愛しているようなイメージがあると思いますが、そんなイメージが崩壊するレベルで内容はかなり重め。
人間性への切込みも鋭く、息苦しくなるほどの胸を締め付けられるような感覚も味わうことができます。
その読後感は、読書好きの人間でもしっかりと満足いく充足感。
ライトノベルというジャンルにとらわれることなく、一つの作品としてしっかりyんでいくと、そこには新しい世界が開けるかもしれませんよ。

7|対岸の彼女(著者:角田光代/文芸春秋)

大人の女同士の友情、というなかなかお目にかかれない題材をつづった小説
若いころに、ともに家出を経験するほど仲のよかった親友とその後の人生で変わってしまった二人の心の葛藤と折り合わないもどかしい友情を描き切った秀作です。
とにかく読んでいて、本当にもどかしい小説。
もどかしいというのは文体やストーリー展開ではなく、むしろそっちの方は本当によくできていてサクサクと読めるのですが主人公をはじめとする登場人物の心の動きが本当にもどかしい。
あまりに愚かでそしてあまりに狭量な心を持った人たち。
それでいて、きっとどんな人間の中にも存在する人間の持つどうしようもなさがひしひしと伝わってきて、ついついため息が出て今います。
しかし、それくらいしっかりと人間の心情を描き抱いているということ。
文章の構成も、2人の女性の目線が交互に章立てされていて、エンターテインメント性も高くその切なくももどかしいストーリーに魅了されることでしょう。
人間の愚かしさとだからこそその先にある清らかさを感じる作品です。

8|将棋の子(著者:大崎善生/講談社)

今や藤井聡太7段の活躍で、注目の競技となった将棋。
そんな将棋の世界のもっとも下のランクである、奨励会、いわばプロ棋士になるための修業の場で繰り広げられる人間ドラマを描いたのが、この将棋の子。
修業の場とはいっても、そこに集められるのは全国から天才の名を背負ってやってきたトップクラスの子供たち。
そんな事ども達が、その幼い精神のまま限られたほんのわずかなプロ棋士昇格の椅子を狙って激しい過当競争を繰り返していく。
そんな、一般社会ではありえない厳しい世界を将棋記者の目で描いた作品です。
当然中には藤井聡太7段のように順調に駆け上りプロ棋士になっていく子もいれば、幼くして現実を見せつけられて戦場に散っていく子供たちもいる。
そんな胸を締め付けられるような切ない現実。
しかし、著者の将棋という世界の対する愛着と、将棋を志す子供たちへの温かいまなざしがその苦しさの中にも確実にある得るものの存在を浮き彫りにしてくれます。
情議会という特殊な世界をのぞき見する感覚で、ぜひ読んでみてください。

9|ノルウェイの森(著者:村上春樹/講談社)

言わずと知れた世界一有名なノーベル文学賞候補、村上春樹の代表作。
日本を代表する作家である村上春樹の代表作であるというだけで、日本近代文学史における代表作の一冊といっても過言ではない名著です。
もしまだ読んでいない人は、小説が面白い面白くない以前の問題として、これが文学史における重要な1ページだと思って読んでみてください。
きっと、満足します、そのあまりの面白さに。
とにかく村上春樹の小説は、文章によって雰囲気を構築するのがうまくなんとなく気怠いような倦怠感の中で、大きな起伏のない淡々とした描写が心にそくそくと迫ってくるのです。
そしてそんな派手なあおりもなく淡々とつづられる文章が、心を刺していく快感。
意識せず、意図せず流れる涙、そして感動。
自分で自分の感情をどう説明していいのか、いったいこれはなんで流れている涙なのかわからず、それをぬぐう間もなく読み進めずにはいられない圧倒的なリーダビリティー。
まさに、本好きのバイブルといっていい一冊。
現代小説における金字塔です。

10|69(著者:村上龍/角川書店)

最後は笑える現代小説、中でも青春小説の決定版をご紹介します。
人間の一生の中でも最もエネルギッシュで、猥雑で、不潔で、それでいてそれをものともしない輝きを放っている高校時代という輝かしい3年間。
そんな、騒々しくも情けない時代を生きている高校生の姿を描いた、傑作中の傑作が本書。
とにかく電車の中で読むのがはばかられるほどに、声をあげて笑いたくなるようなシーンが目白押しで、これをきっかけに読書好きになってもおかしくはありません。
しかも、感動するシーンはしっかりと感動する。
そして、そこには、60年代末の激動の日本の中で社会に対して湧き上がるような不満を抱えている少年たちの切ない葛藤もあって社会派の読み物でもあります。
でも、そんなことはどうでもいいのです。
それはきっと、読まずにはいられない3回目を読んでいる時にしみじみ感じるようなもので、最初の一回はもう難しいことは何にも考えずにただただ笑って読んでください。
それが正しい読み方です。

本好きになるには読むしかない。

本好き、読書好きになるには読むしかありません。
多くの本好きの人たちもこれまでいろいろな本を読んで、中にはちっとも面白くなかった本も読んで、その結果読書好きになっているのです。
ですから本を読みましょう。
少しでもたくさん乱読してもいいので。・
きっと後悔はしないので。

この記事が気に入ったらシェアしよう!