2chスレから書籍化された小説14選【2ちゃんねるで話題となった物語たち】

今や伝説となってしまった2ch(2ちゃんねる)。
かつて・・・ネットにこもっている人間たちにとって、天国のような地獄のような、友のいる場であるような敵だらけの戦場のような、そんな場所だった伝説のサイトです。
そんな2chのスレッドには、たくさんの名作と呼ばれるものが存在しました。
本記事では、2chの名作スレッドから、そのあまりの人気ぶりに書籍化に至ったスレッドをピックアップしてみました。
中には社会現象になったものやアニメ化されたものなど様々なものがありますので、古き良き混沌としたネット世界の物語を楽しみたい人は、ぜひ読んでみてくださいね。

1|電車男(著者:中野独人/新潮社)

言わずとしれた2ch初の最大のヒット小説、電車男。
あるいみ、この電車男と、西鉄バスジャック事件の2つが、日本全国に『2ch』という場所の存在をしらしめたといっても過言ではない、歴史の転換点とも言える小説です。
書籍(小説)化のみならず、漫画、アニメ、ドラマ、映画と様々なジャンルでメディアミックスを果たし、ある意味2000年代初頭の『オタクのテンプレ』のもとともなりました。
それはもう完全に社会現象。
電車の中で絡まれている『エルメスたん』を救った『電車男』が2chスレの住民の手を借りて、自分とはスペック違いの彼女と仲良くなろうと必至で奮戦する姿は物語として優秀。
まだ読んでいないひとは、当時の2chの姿を知る上でもぜひ読んでいただきたい作品です。

2|痴漢男(著者:板野住人/双葉社)

タイトルも内容も、まるで電車男の二番煎じですが、その内容の面白さから話題になった作品。
こちらは電車の中で痴漢に間違えられた男が、自分を痴漢と間違えた『カンチ』という女性に、電車男と同じように2chスレの住民の力を借りて猛アタックするというお話です。
この物語の面白さは、まだネットの中の住民が『女性に希望を持っていた』時代の面白さ。
今や、ネットに粘着する住民は『女性なんて』といったスタンスがほとんどですが、この置換男は『道程喪失』のためにありとあらゆる手を使って突き進んで行きます。
そして、当所の目的は2chスレのみんなの力によって『本当に好きなひとと恋がしたい』に変わっていく。
2chという特定の場所に引きこもっていた主人公の、小学生のようにピュアで不器用で、そして切ない恋心の行方がたまりません。

3|東京少女~ぼくとオタとお姫様の物語(著者:七重俊/アメーバブックス)

なぜ2chスレから書籍化した小説は恋愛物が多いのですが、これもまた切ない純愛の物語。
その物語は掲示板に書き込まれた『クリスマスイブにデートの娘を買ったことがある』という書き込みから始まった、まったく予想外の展開が繰り広げられる恋のお話。
その壮大なスケールは、それが2chスレッドから派生したはなしとは思えないほどにの広がりを見せ、国際的犯罪組織までが見え隠れする展開。
そんな明らかにネットにこもっているオタクではどうにもならないような巨悪に、主人公は愛する女性を救うため、情報だけは誰よりも持っている2chの住人とともに闘いを挑むのです。
その物語は真実なのか虚構なのか、それともスレ住人の見た夢のようなものなのか。
どこか現実感の薄い、東京という都会のおとぎ話です。

4|3日間の幸福(著者:三秋縋/メディアワークス文庫)

2chに連載された小説の書籍化。
その物語のクオリティーの高さから、連載当時ネット上で大きな話題になった作品の書籍化で『寿命を買い取ってもらった。一年につき、一万で』というタトルで漫画家もされている作品です。
その、まるで予想もつかない展開と、不思議な現実感を感じる作風は、まさに小説として一級品の魅力を持っていて、2chの小説として読むのはもったいない力作です。
そして、最後に訪れるその時、きっとあなたは大粒の涙を流すに違いありません。
人生とは何か、生きるとはどういう事か。
ある意味、当時、最も社会から隔絶された場所にいただろう2chの住民だからこそ見ることの出来た、生きるという意味の在り処。
それは、普通に生きる私たちにも共通するものなのです。

5|スターティング・オーヴァー(著者:三秋縋/メディアワークス文庫)

二週目の人生という、ゲーム世界慣れ親しんだ人間にしか思いつかない発想のもとに書かれた小説。
普通、二週目の人生を与えられたのであれば、誰しもが『よりよい人生を生き直す』と考えるところ、この主人公は何一つ不満のない人生だったため『まったく同じに生きていく』を選択すると追う変わった発想。
しかし、そんな彼の1周目をトレースするかのような2周目は、彼の理想とした1周目の人生とは微妙にずれていくのです。
そして、どんどんと落ちぶれてゆく主人公。
そんな主人公を待っていたのは、彼と同じように2周めを与えられ1週目を完全に再現している代役の存在だった。
と、いう、SF要素やファンタジー要素を含んだ不思議な作品です。

6|ゲーセンで出会った不思議な子のはなし(著者:富澤南/ファミ通BOOKS)

何度読んでも涙が止まらないと評判の感動ストーリー。
スレッドに書き込まれたのは、ゲーセンで出会ったどこか変な雰囲気を持つ少女のはなしで、そのあまりにふわっとした内容に始めスレの住人はあまり好意的に受け止めていませんでした。
ところがはなしは途中から急激な展開を見せていきます。
そして、淡々と事実を綴っていく書き手と、その物語に手を合わせて奇跡を祈るスレの住人達、そして、最後の瞬間スレを覆い尽くした涙の嵐。
2chに書き込まれた当時、かなり話題になった作品です。
この物語を最後まで読んでしまったら、あなたはきっと、花屋さんでトルコキキョウを見るたびに、目頭に涙が浮かんでくることでしょう。

7|風俗いったら人生変わったwww(著者:@遼太郎/小学館)

個人的な体感で言えば、むしろ電車男よりスレに登場したときは注目されたような気がする本作。
とにかく最初から最後まで、主人公の『遼太郎』とその憧れの女性である『かよ』さんが、本当に親しみやすく良い人で、まったくの悪感情を起こさせない人物であるのがこの物語の特徴。
というか、2ch初の純愛ストーリーの特徴でもあります。
全体を通して、とにかくダメ男の遼太郎の葛藤とその生き様に、終始笑みが溢れるコメディータッチの展開でありながら、背景は重苦しいはなし。
借金から風俗に落ちた『かよ』さんを救うべく奮闘する、そんなストーリーなのです。
あまりの素敵なお話に、書籍化漫画家はもちろん佐々木希主演で映画化までされた、電車男と双璧をなすヒット作になります。

8|消しゴムくれた女子を好きになった(著者:FUKUDA(W)、志賀渡/PHP研究所)

またしても2chの住民が大好きな、心あらわれるような恋愛大作。
本当に当時の、というか2chが華やかだった頃の2chの住民は、恋愛の話が大好きで、特に中学生が喜ぶような純愛ラブストーリーが大好き。
しかも、どこかひねくれていて、暗くて不器用な人間が、なんとかそんな自分を変えようと頑張って恋愛していくはなしが受けていたのですが、これもまたその代表のような作品。
そして、そういうはなしにはとうぜんのように『できる友人』がいるんですね。
素敵な恋のチャンス、心の菅しい相手、だめな自分が変わっていく成長の軌跡、そしてできる友人。
すべては、スレ民の思い描く理想の世界の姿だったのかもしれません。
そしてその世界は、そうでないひとにも感動を与える物語となっているのです。

9|まおゆう魔王勇者(著者:橙乃ままれ/KADAKAWA)

こちらも、大ヒットとなった2ch発の小説。
ある意味なろう系の小説のさきがけともなった、勇者と魔王という関係性を楽しむジャンルの小説としてその先鞭となった作品です。
物語の本筋は、魔王と勇者のラブストーリー。
勇者と戦うべき存在である魔王とその敵対者たる勇者が恋愛をするという発想の段階で面白いのですが、そのはなしがだんだんと内政物になっっていくのもまた興味深い。
しかも、魔王の政治力の高さは、まさになろう系の知識無双に通じる面白さがあります。
こちらも人気の高さから、書籍化のみならず漫画家アニメ化とメディアミックスも成功し、いわゆる実話系でない2chの書籍化の中では最も売れた作品となりました。

10|うちの母ちゃんすごいぞ 世にも明るいびっくりな話(著者:クズ子/新書館)

2chの住民を構成する要素として、当時最も勢力が強かったニート。
ニートであることを自虐的に扱うスレッドも多く、その先行き不安定な人生に対する悲観と諦めもまた、2chという場所の面白さの一つでした。
そんななか彗星のように現れたのが、このクズ子。
父の借金で両親が離婚。ヤクザの取り立てに人生観を狂わされたクズ子は、親の金でゲームとアニメ三昧の日々を送るクズニートに、妹は不登校、そして兄は家によりつかないという葬式のような家庭。
そんななか、クズ子の母である母ちゃんがとんでもない活躍をしていくという、痛快で、ホロリとくる暖かい家族の話です。
きっと、大勢の脱ニートのきっかけとなっただろう、人生の面白さと素晴らしさに喝采をあげたくなるようなお話です。

11|わたしが手に入れた本当の家族(著者:むらかみ祐/晋遊舎)

「暇だから、過去の家族話でも聞いてくれないか」という書き込みから始まった大人気スレの書籍化。
この家庭もまた、一家離散という憂き目に会い、そして弟ともに祖母に引き取られるも、弟は引きこもり溶かしそして祖母は入院するという最悪の状態からスタート。
しかし、そこに、オタク友達の缶バッチとその母親に出会うことで主人公の人生は変わっていきます。
そのスタイルは、とにかく笑えて泣ける、感動喜劇の王道とでもいうべきストーリー展開で、話の中にある2ch用語に戸惑わなければ、誰もが楽しめる作品といっていいでしょう。
しかも、2ch的言い方をすればVIPスレという、2chの中でも最奥にある淀んだ住民たちの吹き溜まりから生まれたとは思えない感動ストーリーです。

12|ブラック会社に勤めてるんだが、もう俺は限界かもしれない(著者:黒井勇人/新潮社)

良くも悪くも時代の最先端をいっていた2ch。
世間でブラック企業が話題になる前に、2chの中ではブラック企業の話題は定番中の定番で、そのブラック具合を互いに競い合っていたものです。
そして中でもブラックに磨きがかかっていたのがIT企業のSEたち。
この小説は、そんなIT企業に務めるSEが、自分の置かれているまるで蟹工船のような現状をスレの住民に愚痴をこぼす用に語るという体裁で綴られていきます。
そしてその出来は、ビジネス書としても評価できるレベルで、よく出来ている。
出版社が新潮社という時点で、そのクオリティは証明済みですが、映画化もされてヒットしていることから考えても、まさに現代のプロレタリア文学ともいえる傑作です。

13|教室で盛大にゲロを吐いた(著者:山田亮介/晋遊舎)

2chから生まれた最高の青春小説と言っていいのがこの作品。
心の底から爽快になれる、そして青春のあの日が蘇る、まったくもって2chから生まれたとは信じがたいほどの爽やかで素敵な青春のお話です。
中には実話と勘違いして、そんな都合のいいはなしがあるか、と憤るひともいますが、これは2ch発の小説としてはよくあるはなしで、内容のクオリティーから考えるとそんな事どうでもいいと思えるくらいよく出来ています。
普通なら、ここまで邪気のないはなしというのは、なかなか小説にしづらいのです。
しかし、実話かどうだかわからないような形で2chスレッドで綴られたはなしだからこそ、このような真っ直ぐな良い話を書くことが出来たと言っても過言ではないでしょう。

14|姉ちゃんの詩集(著者:サマー/講談社)

弟が勝手に姉のポエムを2chに晒したところ大反響となっての書籍化という異色の作品。
とにかく、姉ことサマーの卓越した想像力と妄想力、可愛くて仕方のない発想力が、お腹を抱えて笑わせてくれたり、時にほっこりさせてくれる素晴らしい作品です。
詩人として生きているひとには決してかけない、少女期という魔法のような時間が与えてくれた刹那の感性。
そんなキラキラ輝く感性の集合体が、この中には詰まっています。
とにかくおすすめです。
2ch発の詩集という特殊な本ですが、そんじょそこいらの詩集よりも心に残る、素晴らしき姉の世界です。

2chという文化の跡地。

もちろん現在も2chはあります。
しかし、様々な変遷を経て、かつてのような雑多でとりとめもない世界はもう存在しないと言ってもいいでしょう、ネットの世界の中心ももはやそこにはありません。
ただ確実に、善悪をごった煮にしたような2chという場所はあった。
そんなネットの歴史を語る上で欠かせない場所の跡地のようなものとして、書籍を楽しんでみてはいかがですか?

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