青春ってある一定の年齢を過ぎるとなんとなく意識してしまう言葉ですよね。
いわゆる青春時代真っ盛りの頃は、そんなこと意識もしなかったのに、過ぎてしまってからわかる…その時代の輝きは遠い時間の果てで眩しいくらいです。
もちろん、素敵な青春を過ごした人もそうでない人もいるとは思いますが…。
しかし、小説の中でなら自分が理想とする青春時代を感じることができます。
様々な青春小説を読んで、その切なさや感動に包まれ、涙してみるのもいいですよね。
泣くことは体に良いのです
感動する小説を呼んで泣く。
もちろんその感動には色々あって、ハッピーエンドに共感してというものあるでしょうしバッドエンドの絶望にというのもあります。
そうつまり別離だの死亡だのというネガティブな涙も、達成感や成功の感動といったポジティブな涙もあるんですね。
なんとなく、そうなるとネガティブな涙は心に良くない気がする人も多いと思います。
思い入れの生まれたキャラクターが死んでいく悲しみなどは、少なくともストレスでしかないんじゃないか?と感動する小説を避ける人っているんですよね。
でも、それは間違い。
人間は涙とともにストレスを発散すると言われていますし、泣くというのはストレスのデトックスになると言ってもいいくらいなんですね。
しかも、感情が大きく揺さぶられることは脳の活動も促し刺激も与えてくれます。
泣くことは、身体にいい、そう思って間違いないのです。
感動で泣ける青春小説15選
1|恋愛寫眞(著者:市村拓司/小学館)
カメラマン志望の大学生が経験した、胸をギュッと締め付けられるような恋の話。
この小説は映画化もされていますので、そちらか入るのもいいと思います。
基本的に、小説の映画化というのは6割は失敗すると思っているのですが、この映画に関しては非常に良くできていますので、まず映画というのでも全然問題ありません。
むしろおすすめです。
内容に関しては、世の中から見れば本当に些細なそれでも当人たちにとっては大きな大きな一つの恋愛の帰結について書かれた作品です。
作者の言葉のチョイスの旨さも相まって、非常に情感豊かな作品ですので雰囲気を楽しみたい人にもぜひ。
2|漁港の肉子ちゃん(著者:西加奈子/幻冬舎)
青春小説かな?と思わないでもないですが。
しかし、一人の若者の成長が重要な鍵になっている小説ですので、ここはむりやりにでも胸を張って青春小説だと言ってもいいでしょう。
一方泣けるということに関しては、間違いなく泣けます。
それこそ、この本を読んで泣けない人というのはいないんじゃないかというレベルで心の底からしっかりと涙を流すことのできる小説であることは請け合います。
しかも、この作品のいいところは絶妙はユーモアのセンス。
コメディと涙の親和性は今更言うことではありませんが、この作品を読めば笑いと涙がいかに相性の良いものかがしっかりと感じられることでしょう。
3|恋はいつもなにげなく始まってなにげなく終わる(著者:林伸次/幻冬舎)
決してベストセラーではないこの本。
本当に短いショートストーリーが収められている短編集なのですが、引っかかりなくサラサラと読める文体もあって本当にサクッと読めてしまう作品です。
しかし、その読書時間とは違うしっかりとした読み応え。
まずなんと言っても、文体というか雰囲気というか、ほとんどは話の中心であるバーのマスターなんですが、とにかく隅々まで行き届いてかっこいい。
このかっこよさが何よりこの作品の肝になります、
そして、短い話であるにも関わらずしっかりと涙を流させてくれるストーリーの強さ。
掘り出し物、という言葉がぴったりな作品です。
4|永遠の0(著者:百田尚樹/講談社)
百田尚樹の代表作と言って良い小説、永遠の0。
御存知の通り零戦パイロットの特攻へ向かう道のりを描いた大ヒットベストセラー小説ですが、戦争モノであるという点で敬遠されている人も多いのではないでしょうか。
もしくは、百田尚樹という個人の思想などで避けている人も少なくはないはずです。
しかしながら、彼の作品は間違いなく素晴らしいもので、この永遠の0も戦争モノとして読むのではなく、ぜひとも青春の感動巨編として読んでいただきたいものです。
そして、きっとその表現で間違いのない感動を得ることができます。
当然戦争や平和、日本に思いを馳せることもあるでしょうが本質は青春巨編です。
5|東京すみっこごはん(著者:成田名璃子/光文社)
高校生が体験する、食事というものの起こす奇跡のような温かいお話。
最近、日本人が忘れかけている家族団らんの食卓の価値というものをしっかりと思い出させてくれて、その上で感動させてくれるのが本書。
汗と涙の青春というより、くらい青春の中にほっこりと心あたためてくれるそんなお話です。
この本を読むと、いかに当たり前に存在した家族の食卓、もっと言えばだれかと共に食事をするということがどれほど大切であるかを思い知らされます。
そして、その大切さを噛みしめるように飲み込めばきっと温かい涙を誘うことでしょう。
将来、もしくはいま現在、ともに食事を取りたい大切な人に贈りたい、そんな本です。
6|余命10年(著者:小坂流加/文芸社)
まずこの本は、ほんとに稚拙で文章が下手くそ。
特に人称がコロコロと変化する不安定な視点や、ところどころ雑な描写、リアリティのない会話など本当にレベルとしては低い作品です。
でも、最高の一冊です。
主人公は余命10年を宣告された20歳の女性。
日々の出来事、特に喜ばしい幸せな出来事ほど苦痛と絶望の種になっていくという悲壮感は胸をかきむしるような悲しみにあふれています。
そして、この作者はこの本を書き上げたあと刊行を待たずに持病の悪化で逝去しています。
そう、この作品はリアルです、リアリティではなくリアル。
それだけにその感情の嵐は切実で、どの小説でも感じたことのない感情を与えてくれるのです。
7|ぼくは明日、昨日の君とデートする(著者:七月隆文/宝島社)
難解な設定で繰り広げられる、まさに青春者という恋愛小説。
基本的に、小説というのは、特にこう言う難解な設定と途中で大きな秘密が明かされるものというのは1度目の衝撃を2読目が超えるということはほとんどありません。
しかし、これは違います。
最後まで読み進めて、登場人物たちの設定をすべて知ったあともう一度読んでください。
もう、最初から泣けます。
本当に、そこからはずっと、すべての言葉や行動がとにかく切なくて苦しくて心の底から湧き上がってくる涙に支配されることでしょう。
ネタバレですので重要な核心が書けないので、なかなか説明は難しいですが、とにかく読んでみてください。
2読目こそが本当の読書体験という、世にも珍しくそして心の底から涙を流せる傑作です。
8|青春デンデケデケデケ(著者:芦原すなお/河出書房)
突き抜けるほど爽やかで、心の底から青春小説。
まさに1ページたりとも青春でない部分がないと言っていいほどにはっきりと間違いなく青春小説なのが、この青春デンデケデケデケ。
本当に突き抜けるような夏空、そんな小説です。
青春小説にはきっと2種類あって、ひとつは美しい青春を描いた小説。
そしてもうひとつは本作のように、どこか泥臭く不器用でそして間抜けで情けない、そんなトホホな青春を描いたものにわけられます。
そして、この作品はそんなとほほを描いた青春小説の筆頭。
笑えて泣ける、傑作です。
9|君の膵臓をたべたい(著者:住野よる/双葉社)
この本に関しては、もはや説明は不要でしょう。
ですので、この本をまだ読んでいない人、つまりいろいろな理由でこの本を手に取ることをためらっている人に対して紹介するならば、これは。
ラノベという文化の発展の可能性、です。
ラノベという一つの書籍の文化、それはともすれば軽薄で単調で面白くないものととらわれがちですが、その特徴は何より読み安さにあります。
そんな読みやすく感情移入しやすいラノベ文体が、しっかりとした構成と一般小説に勝るとも劣らない物語の複雑な展開を手に入れたらどうなるのか。
その答えが、本書です。
もちろん、声を上げて泣ける本です。
10|そして、星の輝く夜がくる(著者:真山仁/講談社)
日本人として忘れることができない2つの震災。
阪神淡路大震災と東日本大震災の2つをつなぐ、心と心のふれあいを描いたのが本書。
そういう意味では明確に青春小説とは言えないかも知れませんが、阪神淡路大震災を経験した教師と東日本大震災の傷跡消えぬ被災地の子どもたち。
その交流と、父兄を巻き込んで広がっていく偽らざる心の交流は、ある異未日本という社会の青春端のようで、傷つきながらも進んでいく若い力を感じます。
繰り返しになりますが、厳密には青春小説ではありません。
しかし、そこには、日本という社会の立ち上がって歩みだす青春のような爽やかさが確かにあるのです。
11|失われる物語(著者:乙一/角川書店)
とにかく切なく苦しい恋の話。
交通事故によって腕の皮膚感覚だけを残してすべての感覚を失ってしまった主人公が、腕を叩くピアニストの妻との交流を描いた作品。
はっきり言ってそこにあるのは恐怖です。
すべてを失ってしまった主人公の境遇を思うと、そのへんのホラー小説など問題にならないほどの恐怖と絶望感を感じます。
しかし、その先にある結末。
その結末が正しかったのか、それを判断できるのはきっと読者だけ。
青春期を通過した主人公がすべてを失ってたどり着く、どの青春より青春らしい純粋な心に触れてみてください。
12|1リットルの涙(著者:木藤亜也/幻冬舎)
厳密に言えばこれは小説ではなく実話。
ですので、余計な脚色はなくまた劇的な恋愛のエピソードもありません、ありませんが、そこにあるリアルという名の重たい衝撃は人生観を変えるほどのものがあります。
主人公は脊髄小脳変性症という難病を患った少女。
健康な体が段々と自由を失っていき、最後は身体の全機能を失って死に至るという残酷を絵に書いたような、神を呪いたくなるような現実に直面した人たちの話。
こう言う話は、自分の健康のありがたみを知るといいます。
しかし、あまりに残酷で救いのない状況に、そんな陳腐な感想をこえ「生きるはなんなのか命とはなにか?」そんな問いにたどり着く一冊です。
13|くちびるに歌を(著者:中田永一/小学館)
アンジェラ・アキの「手紙」という曲にちなんで将来の自分に手紙を書く。
合唱部の顧問になった主人公が自らの美貌につられて合唱部に入部してきた男子と、それまでそこにいた女子との対立の中で、中学生の等身大の思いに気づいていくという話。
中学生という大人でも子供でもない年齢の生徒たち。
そんな青春の不安定さの上にある生徒たちの偽らざる真実の心を感じるだけで、どこか教習に似た感動を覚えるそんな作品です。
また、モチーフになっているアンジェラ・アキの「手紙」という曲との相性も素晴らしくいいですね。
この作品を読んだあと、彼女の曲を切るともう反射で泣けます。
そういう意味で、一風変わった泣ける小説です。
14|センセイの鞄(著者:川上弘美/文藝春秋)
青春は若者の特権ではない。
そんなふうに思いたくなるくらい、70代の男性と40目前の女性というかなり年齢高めの二人の恋愛を暖かく描いたのが本作。
そのゆっくりとした雰囲気の中で展開される純粋で優しい恋愛模様。
それはまさに大人の青春と言うにふさわしい、ピュアで真っ直ぐな恋愛感情の表現です。
人を愛するということ、そしてその結果得られるものと失うもの、そんな恋の究極であり真理であるなにかをじんわり感じさせてくれる一冊。
なのに、滝のように泣けます。
15|旅猫リポート(著者:有川浩/講談社)
卑怯ですよ、猫を出すのは。
もう、もちろん普通の人でも泣けます、それは請け合います。
ただ、猫好きがこれを読んだら本当にもうちょっと周りの人間が心配で病院を紹介してくれそうなくらいに泣けます。
詳しくは書きません。
猫を愛するそこの貴方。
あなたが猫を愛するほど、この本は、あなたの涙腺を破壊しに来ます。
バスタオルをもってぜひ読んでください。
泣きたいという目的をもって本を読む。
泣きたいというワン・イシューで読書する。
それはお行儀の良いことではないかもしれません。
でも、それでも。
素敵な小説を読んで全力で涙したあとの爽快感は、それだけの価値のあるものですよね。
ぜひ、泣いてみてください。