農業は肉体労働。
そんな風に思っている人は多いと思いますし、また、実際農業をやっている人もそのように考えている人は多いのでは愛でしょうか。
また、長きにわたった日本の農政の過剰な補助金政策で、自尊自立の精神を失った農家も少なくありません。
しかし、よく考えてください、農家とは、ただの肉体労働ではなく、本来は個人で農園を経営する「個人事業主」であるはずです。
そう、農業とは肉体労働でもあり立派なビジネス。
これからの時代、農家もしっかりとビジネスを学んで、しっかりとしたビジネスマインドを作り上げる必要がある、そんな観点からおすすめの本を選んでみました。
1|キレイゴトぬきの農業論(著者:久松達央/新潮新書)
日本の農業の特徴として、そこに数々の神話がある、といってもいいでしょう。
農業というのは継いで行くべき伝統文化であり、その精神性の高さが魅力などと本気で思っている人もいないわけではありません。
しかし、それは全くの誤解なのだ、と本書では断じます。
そして他にも有機農法に関することや、様々なことについて農業に存在しうるきれいごとを論破してゆき、もっと実質的で実際的なビジネスとしての農業を見つめていくのです。
農業をビジネスとして発展させ、そして金儲けの道具として使っていくためには、まず農業というものをしっかりときれいごと抜きに認識しておくことが何よりも大切。
そして、そんないわゆる農業に対する様々な神話から抜け出してはじめて、日本の農業の本当の姿と、農業でお金を稼ぐ手段が見えてくるのです。
農業は、憧れう人が多いのに、年々就労者数が減っていくという、きわめておかしな職業。
それもこれも、神話的なきれいごとに彩られた農業という物の形が引き起こしている悲劇であり、農業の一番の問題点ともいえるでしょう。
まずはこの本を読んで、そんなきれいごとからの脱却を図るのが先決なのかもしれません。
2|JAが変われば日本の農業は強くなる(著者:杉浦宣彦/ディスカヴァー・トゥエンティワン)
一般の人には、なじみの薄いJAつまり農協という組織。
これまで日本の農業をけん引してきて、日本の品質の高い野菜や果物、そしておいしいお米を作り出すことに一定の役割を果たしてきた、日本の農業の要ともいうべき組織です。
しかし、今やその旧態依然とした体質や、固定化した利権構造など、様々な面で問題となっている組織でもあります。
これは現場で農業をしている人ならば、だれしも感じることだとは思いますが、今や日本の農業は農協なしでは語れないほどその共依存の関係は深刻なレベルにも達しているのです。
本書では、そんなJAという組織について、しっかりとメスを入れて考えていこうという、そんな気概があります。
そして、交換言われているようなJA解体論やJA悪玉論に対して、JAの抱える構造上の問題や、癒着利権の構造を厳しく批判しながらも、その再生を考えていこうとしているのです。
もちろんそこには著者の個人的な想いが含まれ、色々な立場によって首肯できることとでいないことは存在するでしょう。
しかし、そこには、今日、農協の肥料を唯々諾々と購入し、農協の苗を当たり前のように使い、農協の言うままに農薬を散布する、農協依存しきっている農家にこそ読んでほしい内容が盛りだくさんになっています。
いったい農協とは何なのか、農協は何のためにあるのか。
そんな根本についてしっかりと考えたこともなく、農協の組合員に流されるままになっている日本の農家には、一度しっかりと読んでほしい本です。
3|アグリ・ベンチャー(著者:境新一、齋藤保男、加藤寛昭/中央経済社)
農業を起業する、この一見ミスマッチでよくよく考えれば当たり前な考え方について書かれた本。
この本は、これまで農業をやった事のない人がいかにして農業を起ち上げ、そしてビジネスとして成り立つように起業していくのかについて書かれた本なのですが、これは既存の農家にもかなりためになる本です。
なぜなら、既存の農家にとって、農業だけで一本立ちすることは、もはやベンチャーと変わりないからです。
兼業農家としてただの副収入、下手をするとちょっとしたアルバイトレベルの収入しかないコメ農家というのは日本にたくさんいて、そして、そこまでではなくとも農業で一本立ちできる農家はごく少数です。
しかし、このような本が存在するということは、今、農業の分野にもベンチャーとして起業し、そして生計を立てていくだけのビジネス的土壌が存在するということでもあります。
しかも、これまで農業をやってきた素地があるだけ、既存の農家の方が数歩リードした状態でもあります。
なぜなら、以下に対して儲けのない兼業農家であっても、そこには経験だけではなく、農地や農具、そして知識やコネクションが既に存在っしているからです。
孫あ農家が、こういった本で農業ベンチャーについて学び、まるでベンチャーのように一からビジネスの観点で農業を経営していけば、そこには大きな未来が見えるはずです。
4|農業経済学 第3版(著者:荏開津典生/岩波書店)
農業を取り巻く経済について、しっかりとしたテキストとして書かれている本書。
現在は農業大学や大学の農学部において、農業経済学のテキストとしても使用されている本で、きちんとした学問として農業の何たるかをしっかりと学べる本になっています。
当然、一般書ではなくテキストになりますから、内容は極めて高度。
普通にパララパラとめくり読みするようなものではなく、きちんとノートのメモを取りながら読み進めていくような本ですが、やはり相当役にたつ本であることは間違いありません。
そして、これまで伝来の土地をなんとなく耕すだけの農業をしてきた人にとっては、この一冊はかなり衝撃的な内容になっているはずです。
そう、農業とはこれほど高等な学問として認識されるほど、しっかりとした経済活動であるということに、です。
内容的には、難しい語句や考え方などについて、しっかりとした解説もありますし、きちんと食らいついて読んでいけば理解できないような内容ではありません。
しかし、同時に、簡単に分かった気になれるようなものでも、ないのです。
農業と経済の関係性や、農業というビジネスについてしっかりとした認識のない人にとっては、かなりヘビーな内容ですが、これこそが農業の現実です。
自分が農家として、農業という名のビジネスフィールドに乗り込んでいく前に、こういう本でしっかりと農業の経済としての側面についての認識を持っておくのは必要不可欠。
これレが当たり前のないように思えるまで読み込むことが、これからの「仕事として儲かる」農業をやっていくうえで、かかせない事であることは間違いないことなのです。
5|小さい農業で稼ぐコツ(著者:西田栄喜/農山漁村文化協会 )
これを読んでいる農家以外の人には聞きなれない出版社である農山漁村文化協会こと、農文協。
しかし、農家さんにとっては、特に様々な農業本を読んできた農家さんにとっては、かなりなじみの深い出版社でであり、この出版社の出す本ならば農家としては信頼できるというレベルの会社ですよね。
そう考えると、副題である 「加工・直売・幸せ家族農業で30a1200万円」という、ほんとに?と思ってしまうような内容も、しっかりと信頼できるから不思議です。
そしてその内容は、農業のすばらしさに満ち溢れた内容なのですから、これまた副題にあるような、農業でしっかり金を稼ぐぞ!といった趣ではないところが、おもしろい一冊です。
これはなにも農業に限ったことではないですが、やはり仕事というのはそこに夢や社会に対する貢献のようなものがなければいかに儲かる仕事といってもやりがいは薄いものです。
そして、それは、仕事として一つの事業をなしていくうえで、大きなモチベーションにもなり得ます。
この本では、そんな、農業を仕事として成り立たせていくにふさわしいモチベーションとなるような農業の素晴らしい体験がおおいにつづられています。
そして同時に、お金を稼ぐという点においてもしっかりと考えられている本でもあります。
もちろん個々に書かれていることが農業のすばらしさの答えでも、農業でお金を稼ぐ唯一の方法でもありませんが、この本から学べることは、農業に対する想いとビジネスとしての農業という二面性のバランス。
このバランス感覚を獲得することこそ、楽しく、有意義に、そして儲かる農業をやり遂げていく勇逸の方法なのかもしれませんね。
農業は素晴らしく、そして儲かる
農業はとても素晴らしい職業です。
といえば、きっと多くの人が賛同してくれるはずですが、同時に、農業はとても儲かる仕事だといえば、農業の現実を知っている人ほど首を横に振るでしょう。
農家はもうからんよ、と。
しかし、そういう人ほど、実は農業という職業のポテンシャルに目をやることなく、農業をもって稼ごうとしたことのない人であることが多いのもまた、ゆるぎない現実。
ですからまず、これから農業を稼げる仕事として生きたいと考えるならば、知っておくべきことは、そんな自分の中にある「農業像」のフィルターを通さない農業の本当の姿。
あなたの思う農業とはこんなもの、ではない、農業のありのままの姿です。
それを知ればきっと、農業はあなたの思うように素晴らし仕事であり、そしてあなたの考えとは違って儲かる職業であることがわかるはずです。
そう農業はもうかるのです。
そして、それは農業だけでなくすべての仕事に胸中するように、学び知識を得ていない人間にとってはもうからない職業でもあるということなのです。
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